tend Editorial Team

2026.06.10(Wed)

「今日こそ、絶対に付き合ってみせる」同窓会のたびにアプローチする友人。だが、連絡先を交換しようとした結果

「今日こそ、絶対に付き合ってみせる」同窓会のたびにアプローチする友人。だが、連絡先を交換しようとした結果

集まるたびに一言多い友人

高校時代から続く友人グループの中に、何かにつけてマウントを取るのが癖の子がいる。

誰かの自慢話には必ず「私のほうがもっと〇〇だよ」と割り込み、誰かの悩みには「気にしすぎなだけじゃない?」と返す。

場の空気がそのたびに少しだけ変わるのに、本人はさして気にしていない様子だった。

彼女には、高校の頃からずっと気になっている男性がいる。

同じグループの端に属する、穏やかで目立たない人だ。数年ぶりに顔が揃う同窓会のたびに、彼女は必ず彼にアプローチをかけてきた。

「今日こそ、絶対に付き合ってみせる」

うまくいかなくても懲りない様子で、私たちにはそれが半ば恒例になっていた。

30代になっても、その癖は変わらないままだった。

即答で固まったテーブル

料理が揃い、グラスが何度も空になった頃、彼女は彼の隣に席を移して話しかけ始めた。

昔話、仕事、最近ハマっていること。

見ているうちに、連絡先を求める方向へ向かっているのが伝わってきた。

今夜こそはと意気込んでいるのが、隣のテーブルからでも分かった。

連絡先を交換しようと切り出した瞬間、彼はひと呼吸置いてから言った。

「タイプじゃない、無理」

短い、けれど即答だった。

揺らぎのない声で、はっきり言い切られた。テーブルの話し声がふっと消えた。

彼女はグラスをそのままテーブルに置いて、視線をどこに向けたらいいか分からない様子だった。普段の饒舌さは消えていた。誰も次の言葉を出せず、グループ全員が一瞬黙ったまま顔を見合わせた。

慰めながら、目が合って笑った帰り道

隣にいた友人が「ほら、揚げ物来たよ」と明るく声を上げた。

私も「大丈夫?」と彼女の背中に触れた。彼女はほどなく表情を戻し、宴席はまた賑やかになった。それ以上、誰も触れなかった。

帰りに友人と並んで改札を出たとき、ふたりで目が合った瞬間、声を揃えて小さく笑った。

言葉にしなくても伝わっていた。あのとき顔を見合わせたみんなが、たぶん同じ気持ちだったと思う。

普段、自慢話に必ず水を差してきた彼女が、自分の番になって言葉を失う。

その光景を見てしまうと、口では「大丈夫?」と慰めながら、胸の奥はしっかり軽くなっていた。彼女のことが嫌いだったわけではない。

ただ、いつも誰かに向けていたあの一言が、自分のところに同じ強さで返ってきた瞬間に立ち会えただけだ。あの即答とあの沈黙は、集まるたびに少しずつ積もってきた重さが、一度だけ正反対の方向に動いた夜だったのだと思う。今もたまに思い出して、ひとりで口元が緩む。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.06.10(Wed)

「政治にアニメを使わないで」とSNSで怒りの声。トランプ大統領が『NARUTO』の主人公に扮した加工動画を投稿
tend Editorial Team

NEW 2026.06.10(Wed)

最高裁の初判断を控える同性婚の行方と多様性のあり方を巡る議論。各党訴えに婚姻制度の目的や当事者の複雑な胸中
tend Editorial Team

NEW 2026.06.10(Wed)

「すみませんで終わらしていい案件じゃない」とネットで怒りの声。九州電力送配電、暗号化なしのSSDを紛失
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.04.13(Mon)

「社会人は時間もないから羨ましいな」と学生のいとこに嫌味を言う親戚。いとこが笑顔で放った言葉で状況が一変
tend Editorial Team

2026.01.15(Thu)

「この借金なに…?どうやって返すの?」夫が作っていた多額の借金→夫が放った最悪の言い訳とは【短編小説】
tend Editorial Team

2025.10.02(Thu)

俳優・鈴木裕樹、21年所属した事務所の退所を報告「人生の半分にもあたる時間を支えていただき、心より感謝申し上げます」
tend Editorial Team