「今日こそ、絶対に付き合ってみせる」同窓会のたびにアプローチする友人。だが、連絡先を交換しようとした結果
集まるたびに一言多い友人
高校時代から続く友人グループの中に、何かにつけてマウントを取るのが癖の子がいる。
誰かの自慢話には必ず「私のほうがもっと〇〇だよ」と割り込み、誰かの悩みには「気にしすぎなだけじゃない?」と返す。
場の空気がそのたびに少しだけ変わるのに、本人はさして気にしていない様子だった。
彼女には、高校の頃からずっと気になっている男性がいる。
同じグループの端に属する、穏やかで目立たない人だ。数年ぶりに顔が揃う同窓会のたびに、彼女は必ず彼にアプローチをかけてきた。
「今日こそ、絶対に付き合ってみせる」
うまくいかなくても懲りない様子で、私たちにはそれが半ば恒例になっていた。
30代になっても、その癖は変わらないままだった。
即答で固まったテーブル
料理が揃い、グラスが何度も空になった頃、彼女は彼の隣に席を移して話しかけ始めた。
昔話、仕事、最近ハマっていること。
見ているうちに、連絡先を求める方向へ向かっているのが伝わってきた。
今夜こそはと意気込んでいるのが、隣のテーブルからでも分かった。
連絡先を交換しようと切り出した瞬間、彼はひと呼吸置いてから言った。
「タイプじゃない、無理」
短い、けれど即答だった。
揺らぎのない声で、はっきり言い切られた。テーブルの話し声がふっと消えた。
彼女はグラスをそのままテーブルに置いて、視線をどこに向けたらいいか分からない様子だった。普段の饒舌さは消えていた。誰も次の言葉を出せず、グループ全員が一瞬黙ったまま顔を見合わせた。
慰めながら、目が合って笑った帰り道
隣にいた友人が「ほら、揚げ物来たよ」と明るく声を上げた。
私も「大丈夫?」と彼女の背中に触れた。彼女はほどなく表情を戻し、宴席はまた賑やかになった。それ以上、誰も触れなかった。
帰りに友人と並んで改札を出たとき、ふたりで目が合った瞬間、声を揃えて小さく笑った。
言葉にしなくても伝わっていた。あのとき顔を見合わせたみんなが、たぶん同じ気持ちだったと思う。
普段、自慢話に必ず水を差してきた彼女が、自分の番になって言葉を失う。
その光景を見てしまうと、口では「大丈夫?」と慰めながら、胸の奥はしっかり軽くなっていた。彼女のことが嫌いだったわけではない。
ただ、いつも誰かに向けていたあの一言が、自分のところに同じ強さで返ってきた瞬間に立ち会えただけだ。あの即答とあの沈黙は、集まるたびに少しずつ積もってきた重さが、一度だけ正反対の方向に動いた夜だったのだと思う。今もたまに思い出して、ひとりで口元が緩む。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














