「うわっ…これは無いな」マッチングアプリで会った男の失礼な第一声。だが、私が返した皮肉で状況が一変
無言で値踏みする視線
30代の頃、マッチングアプリでやり取りを続けていた男性と、仕事帰りに駅で待ち合わせました。
文面は丁寧で、写真の印象も穏やかそう。仕事を終えてから向かったので、到着は約束の時間ぎりぎりでした。
柱の脇に立っていた相手と、視線が合います。
けれど、向こうから「はじめまして」の声はありません。
差し出される手も、軽い会釈もない。あるのは、頭のてっぺんから足元まで往復する視線と、口の端だけで作ったような薄い表情だけです。
仕事終わりで化粧が崩れていることを気にしていた自分も、たしかにいました。
けれど、こんな迎え方をされる理由にはなりません。
その視線が止まり、口がわずかに動きました。
「うわっ…これは無いな」
独り言のつもりだったのか、私に聞かせるつもりだったのか、判断がつかないくらい中間の音量。
けれど、確かに耳に届きました。胸の奥が、すうっと冷えていく感覚があります。
店に入らずに告げた一言
瞬間的に、頭の中の予定が全部書き換わりました。一緒にお店に行くつもりだった選択肢が、目の前から消えていく感覚です。怒鳴り返したい気持ちと、ただ早くこの場を離れたい気持ちが、同時に立ち上がってきました。
選んだのは、後者でした。声を張り上げてしまえば、結局は相手の土俵に乗ることになる。そう、頭のどこかで分かっていたんです。
息を整えて、相手の目を見て、できるだけ平らな声を作りました。
「タイプじゃないので帰りますね」
そう言い切ってから、踵を返しました。
後ろで「はぁ?嘘だろ」と裏返った声が聞こえましたが、応じる必要のない言葉でした。
(こんな失礼な人、いるんだな)
驚きで頭が回らなかったのに、足だけは確かな速さで改札に向かっていました。
お店の席に着く前に決断できたことが、自分でも意外でした。同じテーブルに何時間も座って、笑顔を作る義務を負わずに済んだ。それだけで、今夜の私の時間は十分守られたのです。
電車のシートに沈み込んで、ようやく肩の力が抜けました。
失礼な人に費やす一秒は、惜しみなく自分のために返してもらっていい。
その確信が、今でもお守りのように胸に残っています。第一印象で出された値踏みの言葉に、丁寧に向き合おうとする義理は、こちらには一片もないのだと、その夜の電車の中で何度もうなずいていました。
年齢を重ねた今でも、当時の自分の判断を頼もしいと感じる、数少ない夜の記憶として残り続けているのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














