「残ってるなら、もらうね」ホームパーティーの料理を独占するママ友。だが、個別プレートに変えたら視線が泳いだ
大皿が一瞬で消える
月一のホームパーティーは、会費制でみんなが楽しみにしていた。寿司やピザを囲み、持ち寄りを足して、おしゃべりに花を咲かせる。
その時間を変えたのが、途中から加わったママだった。彼女は自分の分を真っ先に平らげると、必ず大皿に向き直る。
「もう食べないの?」
誰かが返事をためらう間に、料理はどんどん彼女の皿へ吸い込まれていった。
「残ってるなら、もらうね」
取り分けようとお箸を伸ばしたときには、もう大皿は空。そんな場面が、毎回のように繰り返された。
「いやー、おいしくてつい食べちゃう」
悪気のない笑顔で言われると、こちらも強くは出られない。気づけば、大皿はいつも空っぽだった。
空気を壊したくなくて
不満がなかったわけではない。むしろ、その場の全員が同じことを思っていた。
「あ、どうぞどうぞ」
そう言いながら、内心はざわついている。けれど誰も切り出せない。波風を立てて、集まりそのものを気まずくしたくなかったのだ。
「やっぱりこの会、最高だわ」
満腹の彼女が言うたびに、私たちは曖昧に笑うしかなかった。お開きのあと、片づけを手伝ってくれたママが小声でこぼした。
「持ち寄ったお総菜、私ひと口も食べてないかも」
誰も悪者になりたくなくて、ずっと黙ってきた。けれど、このままでは集まり自体が嫌になってしまう。次にホストを務めるのは、私だった。今度こそ、と心に決めていたことがある。
手が宙で止まった
その日、私はあえて大皿を出さなかった。料理はすべて、人数分のプレートに最初から取り分けておいた。
「今日は全員ぶん、もう分けてあるから安心してね」
席に着くなり、例のママが大皿を探すように視線を巡らせた。
「えっと、おかわりは」
その手が、伸ばしかけたところで止まる。テーブルの上には、取りに行ける大皿が一枚もない。
「……あ、そっか」
言葉を濁し、視線が泳ぐ。やがて彼女は、自分のプレートだけをじっと見つめて口をつぐんだ。これまでのように、人の分をかき集める余地は、どこにもなかった。
「この方式、すごくいいね」
別のママが声を上げると、テーブルにうなずきが広がった。
「みんな同じだけあるから、安心して食べられるもん」
賛同の声に、取り分け制はそのまま次回からの決まりになった。
彼女はもう、何も言わなかった。自分の皿の寿司を、一つずつ静かに口へ運ぶだけ。あの大皿の独占劇は、その日を境にぱたりと消えた。穏やかなパーティーが、ようやく戻ってきた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














