妻「あ、手伝ってくれるの」→「充電器を取りに来ただけ」とぐずる子供をスルーした夫。後日、妻の仕返しで態度が一変
大事な場面の最中に
その日、夫はソファでスマホゲームに没頭していた。
充電ケーブルをつないだまま、身を乗り出して画面を見つめている。
「うわ、ここで負けたらやり直しだ」
真剣そのものだった。私はその横を通りながら、ふと数日前のことを思い出していた。
7ヶ月の子を寝かしつけていた、あの休日。「休日は育児を手伝う」と約束した夫が、寝室に入ってきたのは手伝うためではなかった。
「あ、手伝ってくれるの」
「いや、充電器を取りに来ただけ」
夫はコンセントからケーブルを引き抜くと、ぐずる子と私を残し、颯爽と出て行った。
「あとよろしく」
こちらを見もしない、あの横顔。残されて泣き出した子をあやしながら、私はその場に立ち尽くした。あの光景が、ずっと頭から離れなかった。
無言で抜いたケーブル
私は何も言わず、夫のスマホにつながった充電ケーブルに手を伸ばした。そして、すっと引き抜く。そのまま、部屋を出ようとした。
「えっ、ちょっと⁉」
夫が、弾かれたように立ち上がった。
「なんで急に抜くんだよ、今いいとこだったのに!」
追いかけてくる夫の前で、私は立ち止まった。声を荒げる気はなかった。怒鳴ったところで、伝わるものは伝わらない。
ただ、静かに告げる。
「この前の私と同じだよ」
「……は? 何が」
「寝かしつけの途中で、あなたが充電器だけ持って出て行った時の」
夫が、反論しようと口を開く。けれど、言葉は出てこなかった。
あの日の自分を思い出したのだろう。みるみるうちに、勢いがしぼんでいく。
「……それは」
言いかけて、また黙る。そして、深くうつむいた。
「……ごめん。あれは、ひどかったよな」
小さな声だった。怒鳴り合いには、ならなかった。
先に眠る子
それから、休日の寝かしつけは夫が引き受けるようになった。最初の頃は、子もなかなか泣きやまなかった。
「あれ、なんで泣くんだ。お腹? おむつ?」
「とんとん、って、けっこう難しいんだな」
慣れない手つきで戸惑いながらも、夫は腕の中で子をあやし続けた。途中で放り出すことは、もうしなかった。
「今日は俺がやるから、休んでていいよ」
そう言ってくれるようにもなった。
このごろでは、子のほうが夫の腕の中で、先にすやすやと眠ってしまう。
「ほら、また俺の腕で寝た」
そっと寝室を出てくる夫は、どこか誇らしげだった。颯爽と退場していったあの背中は、もうどこにもない。
置いていった側と、置いていかれた側。意趣返しのケーブル一本で、二人の立場は静かに入れ替わっていた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














