tend Editorial Team

2026.07.30(Thu)

「他の子には内緒ばい。あんたが可愛いけんね」特別だと言われた私のお年玉。だが、従兄弟と比べて思わぬ事実を知った

「他の子には内緒ばい。あんたが可愛いけんね」特別だと言われた私のお年玉。だが、従兄弟と比べて思わぬ事実を知った

秘密のポチ袋

親戚が一堂に会する集まりの、前の日のことだった。母に連れられ、僕は隣に住むひいおばあちゃんの家へ、一足先に挨拶に立ち寄った。

縁側の日なたで、ひいおばあちゃんは膝掛けをかけて座っていた。僕が名前を告げると、しわだらけの顔が、くしゃっとほころんだ。

「大きゅうなったねえ。ほら、こっちおいで」

手招きされて隣に腰かけると、小さなポチ袋を握らされた。中身は5000円。小学生の財布には収まりきらないほどの、大きな一枚だ。

「他の子には内緒ばい。あんたが可愛いけんね」

「うん、内緒にする」

耳打ちするような小声だった。僕は世界でいちばん得をした気分で、その袋を後生大事にしまい込んだ。

開けて分かったこと

翌日、家が親戚でにぎわった。

もらったお年玉を、僕は一つ下の従兄弟とこっそり数え比べる。

大人たちの輪をすり抜けて、僕らはもらったばかりのポチ袋を、宝物のように抱えていた。どちらが多いか、確かめずにはいられなかったのだ。

ところが、従兄弟のポケットからも、見慣れた柄の袋が出てきた。まぎれもなく、ひいおばあちゃんのポチ袋だ。

「それ、開けてみてよ」

せがむと、従兄弟はあっさり袋の口を開いた。のぞき込んだ僕は、思わず声を上げてしまった。

「1万円が入ってた、僕の倍あるよ」

「同じ袋なのにね」

「特別」と言われていたのは、僕だけではなかったらしい。しかも金額は、こちらがちょうど半分。あのときの膨れっ面は、今でも家族の語り草になっている。

数えていなかったのは

大人になって、ようやく合点がいった。ひいおばあちゃんは、ひ孫の一人ひとりに、同じような台詞を手渡していたのだ。

「あんたが一番の宝ばい」

その一言で、どの子もぱっと目を輝かせる。その顔を順ぐりに眺めるのが、あの人にとってのいちばんのごちそうだったのだろう。

子どもの頃は、金額の大小が世界のすべてだった。あの人が配っていたのは、お金ではなく「あんたが特別」という魔法の言葉だったのだと、今ならよく分かる。

袋に入れた金額の差なんて、本人はたぶん覚えてすらいなかった。多いも少ないもなく、ただ全員を等しく可愛がっていただけの話だ。

今でも親戚が集まると、あのポチ袋の思い出で必ず盛り上がる。金額の差は、もう誰も本気にしていない。何度でも笑える、優しい記憶だ。

※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

RANKING

OTHER ARTICLES

NEW 2026.11.03(Tue)

「さっさとどけよ!」と前の車に毒づく運転席の彼。赤信号で降りた私はタクシーで帰宅し、彼の連絡先を即ブロック
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「そんなに払ってまで買う?」映画館の売店で私を批判した彼。上映後、空になった箱を見せると黙り込んだ
tend Editorial Team

NEW 2026.11.03(Tue)

「あら〜、お菓子の山ね!」と戸棚を荒らす息子を笑って眺めるママ友。私が真顔で告げると、ママ友の余裕が崩壊
tend Editorial Team

RECOMMEND

2026.06.14(Sun)

皇室典範改正案をめぐり国会が緊迫。旧宮家の養子案提示にSNSで国民の理解や象徴のあり方を問う多様な議論
tend Editorial Team

2025.10.30(Thu)

ヒカル、自身の『オープンマリッジ宣言』を芸人がコントにしてる件に「ネットいじめ」と言及。SNSでは「笑いに変えてくれてん...
tend Editorial Team

2026.09.26(Sat)

「若い人が越してきてからなのよ」ゴミ置き場で犯人扱いされた私。だが、班長の一言で女性が黙った瞬間
tend Editorial Team