「これは…手紙?」香典返しに入っていた一通の手紙。手紙の内容に参列者が涙したワケ
長いお付き合いのご夫婦
私の家の並びには、五十年近くも連れ添ってきたご夫婦が暮らしていました。
ご主人は無口な職人肌、奥さまはよく笑うおしゃべりな方で、ふたりが庭先に並んで立っている姿は、町内では見慣れた風景でした。
その奥さまが病で先立たれ、私はご近所を代表するような気持ちで、告別式へ足を運んだのです。
式のあいだ、ご主人はほとんど言葉を発しませんでした。
ただ、棺のそばで奥さまの穏やかな顔をじっと見つめている横顔だけが、言葉にならない深い別れを物語っているようでした。
いつもと違う返礼の品
参列を終えて手渡されたのが、香典返しの包みでした。
ずしりと重いその中には、お茶や海苔といった、法事でよく見かける品が丁寧に納められています。
ふつうなら、それで終わりのはずでした。ところが、その一番上に、一枚の白い封筒がそっと忍ばせてあったのです。
ご遺族からのごあいさつだろうと、私は何気なく封を開けました。
(これは…手紙?)
取り出したのは、便箋を印刷した一枚のカードです。けれど、そこにあったのは、決まりきった事務的なお礼状などではありませんでした。
ご主人が、旅立った奥さまへ宛てて書いた手紙が、そっくりそのまま刷られ、その下に我々へのお礼の言葉が書いてありました。
手紙が語ったこと
手紙には、若い頃に出会ってからの日々が、ひとつひとつ丁寧に綴られていました。
慣れない土地でともに所帯を持ったこと、貧しくても食卓にはいつも笑い声があったこと。
長いあいだ苦労をかけたこと、それでも隣でずっと笑っていてくれたこと。飾り気のない朴訥とした文字だからこそ、かえって一字一句が胸に迫ってきます。
末尾には、ありがとう、という短い言葉が添えられていました。
半世紀を共に生きた相手への、これ以上ない餞の言葉だったのだと思います。
読み終えたとき、私の目からは、自然と涙がこぼれ落ちていました。
のちに知ったことですが、あの日会場にいた人はみな、同じ封筒を開いて、同じように涙したそうです。
悲しいだけのはずの一日が、こんなにも温かな気持ちとなって、いつまでも胸に残る。長年連れ添うとは、きっとこういうことなのでしょう。
これほど心のこもった見送りを、私はほかに知りません。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














