「先輩、ここ座っていいですか」いつも僕の隣にいた後輩。だが、あえて距離をとったワケ
隣の席は、いつも同じ後輩で埋まっていた
大学のサークルに、僕を慕ってくれる後輩がいました。飲み会になると、彼はいつも僕の隣にやってきます。
「先輩、ここ座っていいですか」
頼られるのは嬉しかったですし、最初は特に気にしていませんでした。ただ、何度か集まりに参加するうちに、少し困ることも増えてきました。
僕がほかの人と話していても、彼は隣で会話が終わるのを待っています。別のテーブルが盛り上がっていても、自分からそちらへ行くことはほとんどありません。
僕も「ちょっと向こうへ行ってくる」と言えばいいだけなのですが、せっかく慕ってくれているのに冷たくするようで、なかなか席を立てませんでした。
持ち物についても、こんなことがありました。
「先輩が使ってる財布、僕も買ったんです」
嬉しそうに見せられると嫌な気はしません。ただ、僕以外の人とはあまり話していないように見えることが、少し気になっていました。
輪を広げてみせた日
次の飲み会でも、彼はいつものように僕の隣へ座りました。
その日は向かいに同期がいたので、僕は何気なく話を振ってみました。
「そういえば、その財布どこで買ったんだっけ?」
すると同期も興味を持って、「それ、使いやすい?」と彼に尋ねました。
最初は僕のほうをちらちら見ながら答えていた後輩も、やがて同期と直接話すようになりました。好きな店の話まで広がり、思った以上に会話が続きます。
そこで僕は言いました。
「今度はみんなでランチに行こう、同期も一緒に呼ぶよ」
「いいですね。行きたいです」
彼は少し驚いたあと、嬉しそうに笑いました。
後日、本当に何人かでランチへ行きました。後輩は最初こそ僕の近くにいましたが、同期から話しかけられると、そのまま二人で話し込んでいました。
それから同期も、サークルで彼を見かけると自然に声をかけるようになりました。
次の飲み会では、後輩は僕から少し離れた席で、同じ学年の仲間たちと笑っていました。
途中で僕のところへ来て、「先輩、今日はそっちなんですね」と声をかけます。
「うん。またあとで話そう」
「はい」
それだけ言うと、彼はすぐ元の席へ戻っていきました。
以前ならずっと僕の隣にいたので、その後ろ姿を見て少し安心したのを覚えています。
その後、僕は忙しくなり、サークルへ顔を出す回数が減りました。久しぶりに部室へ行ったときも、彼は仲間と楽しそうに話していました。
帰り際に「また来てくださいね」と笑って手を振られ、僕も「またな」と返しました。
今では連絡を取ることもほとんどありません。それでも気まずさはありません。彼だけでなく、断れずにいた僕も、少しずつちょうどいい距離を見つけられたのだと思っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














