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2026.09.13(Sun)

「何してるの!早く立ちなさい!」運動会で観客席から届いた声。だが、転んでも最後まで走った子が、やっと顔を上げた瞬間

「何してるの!早く立ちなさい!」運動会で観客席から届いた声。だが、転んでも最後まで走った子が、やっと顔を上げた瞬間

最後の走者が、カーブで転んだ

秋の運動会で、私は本部席の近くに座っていた。午前の最後のリレーが始まり、砂ぼこりの立つトラックを子どもたちが走っていた。

最後の走者にバトンが渡ったころには、四つの組の差はほとんどなかった。白い帽子がまとまるようにカーブへ入っていく。

その中で、先頭を追っていた子が足をとられた。

膝から地面に落ち、そのまますぐには起き上がれない。

ほかの走者が通り過ぎると、周囲から「大丈夫?」という声と拍手が上がりかけた。

そのとき、観覧席から大きな声が飛んだ。

「何してるの!早く立ちなさい!」

子どもは顔を伏せたままだった。

もう一度、同じ方向から声がした。

「ほら、みんなもう行ってるよ。早く!」

さらに「そんなところで転んで、恥ずかしいよ」と続いた。

さっきまで聞こえていた拍手が、急に小さくなった。

となりに座っていた保護者が、心配そうにトラックを見た。

「……大丈夫かな」

「痛そうだよね」

私もそれ以上は何も言えなかった。

ほかの走者が離れたのを確認すると、コースの内側にいた担任の先生が子どものそばへ駆け寄った。

しゃがみ込んで、膝のあたりを確かめる。

「痛い?立てそう?」

子どもが小さくうなずいた。

「そっか。じゃあ、慌てなくていいよ。ゆっくり立とう」

先生は手を伸ばしたが、無理に引き起こすことはしなかった。

少しして、子どもは地面に手をつき、自分で立ち上がった。

先生が「走れそう?」と聞くと、その子はもう一度うなずいた。

そして、バトンを握り直して走り出した。

先生はその背中をしばらく見届けると、コースの内側を通ってゴール側へ戻っていった。

3人目の「よく走ったね」で、顔を上げた

ほかの三つの組は、もうゴールしていた。

トラックを走っているのは、その子だけだった。

最初の数歩は少しぎこちなかった。それでも途中で止まることはなく、最後の直線ではしっかり腕を振っていた。

やがて白線を越える。

ゴールのそばで待っていた先生が、すぐに近づいた。

「よく走ったね。痛かったね」

子どもは下を向いたまま、先生の差し出した手を握った。

そこへ係の保護者がタオルを持ってきた。

「よく走ったね。膝、ちょっと見せてね」

その声にも、子どもは黙ってうなずいた。

近くにいた別の組の保護者も、通り過ぎるときに足を止めた。

「最後まで、よく走ったね」

その言葉が聞こえたとき、子どもがようやく顔を上げた。

視線の先には、最初に駆け寄った先生がいた。

先生が少し笑う。

「うん。よく頑張った」

子どもの肩から、少し力が抜けたように見えた。

係の人が膝の手当てをしているあいだ、その子はバトンを返し、今度は自分の帽子を両手で握っていた。

放送からは、もう次の種目の案内が流れている。本部席のあたりにも、いつもの運動会のざわめきが戻ってきていた。

片づけが始まったころ、となりにいた保護者が小さく息をついた。

「最後、顔上げたね」

「うん。ちょっとほっとした」

それだけ話して、私たちはまた退場門のほうを見た。

あの子はもう自分の組の列に戻っていた。

前の子から何か話しかけられると、小さくうなずいている。笑ってはいなかったけれど、もう下を向いてはいなかった。

列に合わせて、まっすぐ前を向いて歩いていた。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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