「浮いたお金で愛車購入するまでの記録」彼女の部屋で見つけたノート。そこに並ぶ見覚えのある金額にゾッとした
財布を出すたびに見た、彼女の笑顔
10年ほど前、付き合っていた彼女とのデートでは、食事代などの支払いをほとんど私が受け持っていました。
彼女は会計が終わるまで隣で待ち、店を出ると、いつも笑顔でお礼を言ってくれました。
「今日もおいしかったね」
「うん。また行こうか」
「いつもごちそうさま、ありがとう」
その言葉を聞くのが、私はうれしかったのです。
店を選ぶのはいつも彼女で、会計をするのは私。それが私たちなりのデートの形なのだと、特に疑問も持っていませんでした。
ある休日の昼、私は彼女のワンルームの部屋に招かれました。
彼女は部屋の奥のキッチンでやかんを火にかけ、鼻歌を歌っていました。
「お茶、すぐ入れるから。適当にしてて」
「うん、ありがとう」
待っているあいだ、机の端に一冊のノートが置かれているのが目に入りました。
何のノートだろうと思い、私はつい手に取って開いてしまいました。
ノートに並んだ、見覚えのある金額
ページには、日付と店の種類、その横に金額が細かく書き込まれています。
パスタを食べた日、焼き鳥を食べた夜。見覚えのある日付が次々と出てきました。
並んでいるのは、私が支払った食事代でした。
最初は何のための記録なのか分からず、何ページも目で追ってしまいました。
いけないことをしていると思いながらノートを閉じると、表紙には「愛車購入への道」と書かれていました。
気になって最初のページを見直すと、そこにはこうあります。
「浮いたお金で愛車購入するまでの記録」
思わず、もう一度その文字を読み返しました。
最後のほうには、目標まであといくらかも記されていました。残りの金額は、思っていたよりずっと小さなものでした。
彼女は、私が払った食事代を、自分の「浮いたお金」として数えていたのでしょうか。
そう考えた瞬間、いつも聞いていたお礼の言葉が、別の意味を持って感じられました。
もちろん、なぜこんな書き方をしていたのかは、彼女に聞かなければ分かりません。
それでも、何も知らずに得意になっていた自分が急に恥ずかしくなりました。
キッチンから湯を注ぐ音が聞こえ、私は慌ててノートを元の向きに戻しました。
彼女が湯のみを持って振り向きます。
「お茶、入ったよ。熱いから気をつけてね」
「……ありがとう」
「どうしたの?座りなよ」
「ああ、うん。いただきます」
彼女はいつもどおりの笑顔でした。
湯のみの温かさを感じながらも、私はうまく顔を上げられませんでした。
結局、その日はノートのことを一言も聞けませんでした。
机の端には、さっき私が戻したノートがきちんと置かれています。
何度も聞いてきた「ありがとう」を、これから前と同じ気持ちで聞けるのか、自分でも分かりませんでした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














