「留守のあいだに少し借りただけだ」義母の介護費用を無断で持ち出した義兄。だが、封筒の文字を見て手を止めた
義母の介護費用が消えた引き出し
数年前の昼、夫と外出先から帰ってくると、居間の棚の引き出しが開いていました。
そこには、義母の介護費用として用意した現金を、封筒に入れてしまってあります。
慌てて中を確かめると、封筒は空でした。
「どうした?顔色が悪いぞ」
「お金がないの。ここに入れてたのに…」
夫も空の封筒を見つめ、言葉を失いました。
夫の兄である義兄は合鍵を持ち、家に出入りしていました。
ただ、この時点では誰が現金を持ち出したのか分かりません。
数日後、留守のあいだに現金が同じ引き出しに戻されていました。
誰からも連絡はありません。
納得できず、夫と相談してもう一度同じ場所に入れてみたところ、数日後には再びなくなっていたのです。
そのお金も、しばらくして留守中に戻されました。
夫はその夜、義兄に電話をかけました。私は隣で、受話器から漏れてくる声に耳を澄ませました。
「引き出しのお金、兄さんが持っていったの?」
「ああ。ちゃんと戻しただろ」
「黙って持っていくのはやめてくれよ」
「戻してるんだから、何が問題なんだ」
「返せばいいって話じゃないだろ」
義兄の声がだんだん大きくなりました。
「留守のあいだに少し借りただけだ」
その言い方を聞いて、私は言葉を失いました。
義兄にとっては、黙って持ち出すことより、戻したかどうかが大事なようでした。
電話を切った夫は、新しい封筒に「母さんの介護費用」と大きく書きました。
中に現金を入れ、また同じ引き出しへ。私は気が気ではありませんでした。
封筒に書かれた文字を見た義兄
数日後、夫と外出先から帰宅すると、居間から引き出しを開ける音がしました。
玄関から目を向けると、棚の前に義兄が立ち、封筒を手にしていたのです。
義兄は封筒の文字に目を落とすと、手を止めました。
「それ、母さんの介護のお金だよ、兄さん」
夫が声をかけると、義兄ははっと振り返りました。
「いや、その…」
私たちと目が合いかけると、すぐに視線をそらします。封筒を引き出しに戻し、何も言わずに私たちの横を通り過ぎ、帰っていきました。
その日から、義兄は家に来なくなりました。引き出しから現金が消えることもなくなりましたが、すぐに不信感が消えたわけではありません。
「鍵をつけよう。もう、誰にも勝手に開けさせない」
夫はそう言って、その棚に新しい鍵をつけました。鍵をかける音を聞いて、ようやく少しだけ安心できた気がしました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














