「うちの子だけダメってことですか?」スーパーの試食台で怒り出した母親。だが、そばにいた別の母親が伝えた事実
試食を楽しみにしていた女の子
今から20年ほど前のことです。当時の私は食品の販売の仕事をしていて、さまざまなスーパーで試食販売を担当していました。
試食ではアレルギーへの配慮から、子どもだけには提供しないという決まりがありました。
保護者と一緒に来てもらう必要があったのです。
ある日の昼、いつものようにスーパーの売り場で試食の準備をしていると、小学校低学年くらいの女の子がひとりでやってきました。
女の子は背伸びをしながら試食台をのぞき込みました。
「おいしそう!」
私は女の子の目線に合わせてかがみ、笑顔で声をかけました。
「おうちの人と一緒に来てね」
女の子は少し残念そうな顔をしましたが、そのまま通路の奥へ走っていきました。
お母さんを呼びに行ったのかなと思い、私は試食の準備に戻りました。
ところが、しばらくすると、先ほどの女の子が母親と一緒に戻ってきました。
母親は険しい表情をしています。
「すみません。さっき、この子に試食を断りました?」
「はい。お子さまだけにはお渡しできない決まりがありまして……」
「どうしてですか?ほかのお客さんには配ってますよね?うちの子だけダメってことですか?」
母親の声が大きくなり、周囲のお客さんもこちらを振り返り始めました。
「いえ、そういうことではないんです。保護者の方と一緒なら…」
「だったら、最初からちゃんと説明してくれればいいじゃないですか!」
母親は納得できない様子でした。
私も説明を続けようとしましたが、なかなか最後まで聞いてもらえません。
「子どもが楽しみにしてたのに。こんな対応じゃ困ります」
試食台の前で怒られ続け、私はどうしたら分かってもらえるのかと困り果てていました。
隣にいた母親がかけてくれた言葉
そのとき、試食台の横で順番を待っていた別の母親が、声をかけてくれました。
小さな子どもの手を引いていたその女性は、少し遠慮がちに話し始めました。
「あの、すみません。子どもだけには渡せないっていう決まりなんですよね?」
私が「はい、そうなんです」と答えると、女性は続けました。
「うちの子、食物アレルギーがあるんです。だから、親が確認できるようにしてもらえるのは助かります」
怒っていた母親は、女性のほうを向きました。
「そうなんですか…」
「お母さんと一緒なら大丈夫なんですよね?」
女性に尋ねられ、私はうなずきました。
「はい。保護者の方に確認していただいてから、お渡ししています」
それを聞いた母親は、少し気まずそうに視線を落としました。
先ほどまでの勢いはなくなり、何か言いかけたものの、そのまま口を閉じてしまいました。
そして、女の子の手を引くと、足早に売り場を離れていきました。
私は、声をかけてくれた女性に頭を下げました。
「ありがとうございます。助かりました」
「いえいえ。こちらこそ、いつも気をつけてもらえてありがたいです」
女性はそう言って、笑顔を見せてくれました。
私はほっとしながら、女性に試食の小皿を差し出しました。
決まりを守っていても、その理由が相手に伝わらなければ、誤解されてしまうことがあります。
あの日、私の説明を聞いてくれた女性が、さりげなく間に入ってくれたことは、今でも忘れられません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














