「小さい子がいるの、見れば分かるでしょ」ショーの最前列に割り込んだ家族。だが、スタッフの一言で態度が一変
無料エリアの最前列で待っていた私たち
去年の冬、友だちとテーマパークへ出かけました。
昼のショーを楽しみにしていたのですが、有料席は購入していなかったため、無料エリアから見ることにしました。
せっかくなら見やすい場所で楽しみたいと思い、私たちはショーが始まる2時間前から場所取りをしました。
冬の寒さで手がかじかむなか、ようやく確保できた最前列。開演が近づくころには、私たちの後ろにも親子連れやカップルがぎっしりと座っていました。
ところが、ショーが始まった直後のことです。
小さな子どもたちを連れた家族が横からやってきて、私たちの目の前に入り込んできました。
それまで待っていた様子はなく、夫婦はそのまま立ってステージを見始めたのです。
これでは、私たちからショーがほとんど見えません。
私は少し腰を浮かせ、母親に声をかけました。
「あの、前に立たれると見えないんですけど……」
すると母親は振り返り、私を見下ろすようにして言いました。
「小さい子がいるの、見れば分かるでしょ」
あまりに堂々とした返事に、私は一瞬言葉を失いました。
さらに母親は、当然と言わんばかりに続けました。
「前でいいでしょ」
夫婦の頭には、大きな飾りのついたカチューシャまであります。立っているだけでも見えないのに、これでは後ろの人たちも困っているはずです。
実際、後ろのほうから男性客の声が聞こえてきました。
「おい、見えないよ」
しかし父親はちらりと振り返っただけで、再びステージへ顔を向けました。
周囲の人たちも困った表情を浮かべています。
私たちは2時間も待っていたのに……。楽しみにしていたショーが目の前で進んでいくのを感じながら、悔しい気持ちでいっぱいになりました。
笑顔のスタッフに返す言葉をなくした夫婦
しばらくすると、制服姿の若い女性スタッフが通路からやってきました。
私たちの前に立っている家族の横で足を止め、にこやかに声をかけました。
「申し訳ございません。こちらは先にお待ちいただいていたお客様の前になりますので、後方へ移動をお願いいたします」
母親は子どもたちを自分のほうへ引き寄せ、何か言いたそうな顔をしました。
「でも、子どもが…」
するとスタッフは、後ろに座っているお客さんたちへ目を向けました。
そこには、小さな子どもを抱いた親子連れも何組か座っていました。
「お子さま連れのお客様も、皆さま先にいらしてお待ちいただいていますので」
そして、夫婦の頭にあるカチューシャにも目を向けました。
「それから、ショーの間はカチューシャも外していただけますか。後ろのお客様が見えにくくなってしまいますので」
スタッフの口調は穏やかでしたが、伝えるべきことははっきりと伝えていました。
母親はそれ以上何も言えなくなったようで、表情をこわばらせました。
父親も顔を赤くして目をそらし、黙ってカチューシャを外しました。
母親もカチューシャを外すと、子どもたちの手を引いて後ろへ下がっていきました。父親もそれに続きます。
ようやく私たちの前が開け、ステージ全体が見えるようになりました。
後ろの人たちもほっとした様子です。
隣にいた友だちが、私の袖をそっと引きました。
「見えるね、全部」
私たちは顔を見合わせて笑いました。
ちょうどショーは一番の盛り上がりを迎えていました。
最初から最後まで落ち着いて見られなかったのは残念でしたが、スタッフがきちんと対応してくれたことで、最後は気持ちよく楽しむことができました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














