「毎日弾いてる。3万5千円出して」とレッスン代をねだる妹。だが、ピアノを見せてと頼むと笑顔が消えた
半年ぶりの妹の部屋で、3万5千円を頼まれました
冬の夜、妹はレッスン代の3万5千円を笑顔でねだりました
冬の夜、私は半年ぶりに、妹がひとりで暮らす1LDKを訪ねました。
引っ越しを手伝って以来です。
ダイニングの椅子に腰かけるなり、妹はスマホを伏せて、にこにこと身を乗り出しました。
習っているというピアノの話です。
来月から週2回の個人レッスンに増やすため、費用がかさむのだそうです。
「毎日弾いてる。3万5千円出して。」
今夜のうちに振り込んでほしいと、妹は手を合わせて笑います。
妹は以前にも家族にお金の立て替えを頼んだことがありました。
旅行へ出る前の母からも、あの子にお金を渡すときは使い道を自分の目で確かめてね、と頼まれていました。
けれど私は、返事に詰まりました。
妹は毎晩弾くと言い切り、私には確かめる材料がありません
両親は旅行中で、この部屋には私たち二人しかいません。ピアノは奥の洋室にあり、閉まった引き戸の向こうで、ダイニングからは見えません。
「毎晩、帰ったらまず弾いてる。」
そのまま一人暮らしの家事の話になると、妹は得意げに続けました。
「洗濯物は、その日に全部畳むの。」
妹の話が本当かどうか、確かめる材料は私の手元にありませんでした。
ためらう私に、妹は口をとがらせました。
『疑うなら出さなくていいよ。お母さんには、お姉ちゃんがケチだったって言っとくから』。母に告げ口をされるのは気が重い話です。
それでも3万5千円は、軽い額ではありません。
しかも妹は、部屋を勝手に見られるのを何より嫌います。以前、妹の前の住まいで引き出しを開けてしまったときは、三日も口をきいてくれませんでした。
払う前に、ひとつだけお願いしました
洋室を開けると、ピアノの上に洗濯物の山が載っていました
勝手に見るのはやめて、先に許しをもらうことにしました。
『払う前に、毎日使うピアノを見せてもらってもいい?』。
そう頼むと、妹は少し黙り、それまでの笑顔を消しました。
頬杖をついたまま『どうぞ』とだけ答え、動きませんでした。
私が立ち上がると、妹は一瞬こちらを見ましたが、何も言いません。
本当に確認するとは思っていなかったのかもしれません。
洋室の引き戸を開けると、奥の壁ぎわに黒い電子ピアノが置かれています。
ふたは開いたままです。鍵盤は一枚のバスタオルで覆われ、その上に洗濯物が山になっていました。
毎晩練習するなら、そのたびに洗濯物をどかさなければなりません。
もちろん、一時的に置いただけの可能性もあります。
それでも、毎日欠かさず弾いているという妹の話とは、どうにも結びつかない光景でした。
「ピアノの上に、服とかがあるよ」
妹は鉢植えを床へ下ろし、笑顔は消えていました
背中の気配に振り向くと、妹が洋室の入口まで来ていました。
「今日だけ置いただけ!」
「毎晩弾く人のピアノには見えないよ」
妹は何か言い返そうとしましたが、途中で口を閉じました。
もちろん、この光景だけで、半年間ピアノを弾いていないと証明できるわけではありません。
私はそれ以上決めつけず、妹の言葉を待ちました。
しばらく沈黙が続きました。
妹は眉を寄せ、口を一文字に結んだまま、ぽつりとこぼします。
『弾いてない。半年前から、一度も。遊ぶお金が足りなくて、レッスン代って言えば出してくれると思った。止めたら嘘だと思われるから、見ていいって言った』。
妹は、見せてもいいと言えば私が引き下がると思っていたようです。
しかし、実際にピアノの前まで来られて、これ以上嘘を重ねられなくなったのでしょう。
私はバッグから財布を出さず、母には私からそのまま話すと伝えました。
ケチだったと話すなら、この山のことも一緒に話すねと言うと、妹は黙ってうなずきました。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














