「貸すって言ったのはそっちだろ。水道代は全部払え」と柵越しに開き直る隣人。庭の蛇口ひとつで強がりが崩壊
隣の男性は柵越しに腕を組み、水道代の負担を拒みます
柵越しの言い分
真夏の朝、私は敷地の境にある低い木の柵の前に立っていました。
柵の上を、私の家の外水栓から延びた緑のホースが越え、隣家の庭へ消えています。
去年の夏、隣の男性が『うちの水栓が壊れた。直るまで少し貸してくれ』と頼み込み、私は断れず、ホースをつなぐことを許しました。
少しのはずが一年続き、今では毎朝の庭の水まきだけでなく、洗車にも使われています。
一度ホースを外したこともありました。
しかし、男性は何度も玄関までやって来て、大声で文句を言いました。
近所とのトラブルを避けたい一心で、結局つなぎ直してしまったのです。
先月の水道代は、貸し始める前と比べて倍近くに増えていました。
最初に貸したとき、料金について取り決めをしていなかったのは確かです。
しかし、これほど長く使われるとは思っていませんでした。
せめて隣家で使用した分は負担してほしいと伝えると、麦わら帽子の男性は柵の向こうで腕を組み、あごを上げました。
「貸すって言ったのはそっちだろ。水道代は全部払え。」
男性は、私が無料で貸すことを了承したのだから、今さら料金を請求するなという態度でした。
私は一時的に貸したつもりでしたが、男性は最初から無料で使い続けるつもりだったのかもしれません。
庭は高い生け垣に囲まれ、水栓が壊れているのか見えません
男性は一人暮らしで、庭は高い生け垣に囲まれています。私は越してきてから、その庭に入ったのは一度だけです。
最初の春、風で飛んだ洗濯物を取りに入った際、怒鳴られたからです。
『うちの水栓は壊れたままだ。業者にも見せたが、お手上げだった。庭に水を撒く手は、お宅の水栓しかない』。男性はそう言い切りました。
「去年から一滴も出ん。」
「ひねっても出ん。直る物じゃない。」
どこの業者かと聞いても『忘れた』と言うだけです。
水栓は生け垣の陰で、本当に出ないのか私には見えませんでした。
それに、修理できないという説明にも疑問がありました。別の業者に相談することもできるはずです。
私は、まず水栓の状態を確認したいと考えました。
生け垣の向こうへ
私が水栓のハンドルを回すと、水が大きな弧を描いて噴き出しました
それでも、これ以上、隣家の使用分まで水道代を払い続けるのは嫌でした。
本当に故障しているなら、修理を依頼してもらえば済む話です。私がいつまでも水道を貸し続ける必要はありません。
そこで、私は男性に水栓を確認させてほしいと頼みました。
「見せてください。本当に出ないなら、修理を頼みましょう。」
男性は私が生け垣の中へ踏み込む度胸などないと高をくくったのか、鼻で笑いました。
『入れるもんなら入ってみろ』。あごで庭の奥をしゃくり、私が柵の切れ目へ向かっても止める気配はありません。
私は男性の様子を確認してから、柵の切れ目を通って庭に入り、生け垣の角を曲がりました。
その根もとに、古い立水栓が立っています。
蛇口には短いホースが取り付けられ、先端が庭の中央へ向いていました。
私はホースの先に誰もいないことを確かめ、水栓のハンドルに手をかけました。
「ひねってみます。」
ハンドルを回した途端、ホースの先から水が勢いよく噴き出しました。
水は大きな弧を描いて庭の真ん中へ伸び、落ちた水が地面で白くはね上がります。
故障していると聞かされていた水栓から、何の問題もなく水が出たのです。
男性は水を浴びて嘘を認め、自分の水栓にホースをつなぎ直しました
男性は目を見開き、眉を寄せました。口の端が引きつっています。
「たまたま今、直ったんだ!」
「何も直してません。ひねっただけです。」
男性はなおも言い訳を続けました。しかし、私が業者の名前や修理した箇所について改めて尋ねると、答えられなくなりました。
私は、これだけ普通に水が出るのなら、もう私の家の水道を貸す必要はないと伝えました。
男性はしばらく黙り込み、視線をそらしました。
やがて、観念したように口を開きました。
『……本当は壊れていなかった。お宅の水ならタダで使えると思って……。業者も呼んでいない』
男性は自分の水道代を節約するため、故障したと嘘をついていたのです。
慌てて水を止めようとした男性は、先にホースの向きを変えようとして、勢いよく流れる水を胸と顔に浴びてしまいました。
麦わら帽子の下から雫が垂れ、作業着の胸が濡れています。
私は、その場で水道の貸し出しを終わりにすると伝えました。
さらに、これまでの使用分についても負担してほしいと申し出ました。
男性は最初こそ渋い顔をしていましたが、自分の嘘が発覚したこともあり、話し合いには応じると約束しました。
そして、蛇口につながっていた短いホースを外すと、庭に伸びていた自分のオレンジ色のホースを、自宅の水栓につなぎ替えました。
私は自宅に戻り、外水栓から緑のホースを取り外しました。
後日、男性と過去の水道料金の検針票を確認しました。前年の同じ時期と比べて使用量が増えていることは分かりましたが、増加分のすべてが隣家での使用によるものとは断定できません。
そこで、男性が水道を使っていた期間や頻度を踏まえて話し合い、お互いが納得できる負担額を決めました。
男性は後日、約束した金額を支払ってくれました。
こうして、一年間続いた水道の貸し借りと費用の問題は、ようやく解決しました。
何より、これからは隣人の水道代まで心配せずに済みます。私はほっと胸をなで下ろしました。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














