「俺がいないとどうしようもないな」誰の話にも気軽に乗ってくれる同僚→豹変した本性に凍りついた
親身を装う声色の正体
前の職場で隣の席だった同僚は、誰の話にも気軽に乗ってくれる人でした。
三十代半ばの中堅で、廊下で立ち話をする相手にはいつも穏やかな笑顔を返していたのです。
後輩の悩みを聞き出してはアドバイスを返し、休憩室では雑談の中心にいる。
そんな立ち位置を、本人もどこか気に入っているように見えました。
けれど私の机の脇に立つときだけ、声の温度が一段下がる瞬間がありました。
会議の少し前や評価面談の直前、必ずその場面に合わせて近づいてくるのです。
「俺がいないとどうしようもないな」
耳元で落とされたその一言が、ずっと頭の隅に引っかかっていました。
励ましの体裁を装いながら、相手をひとりにする響きが含まれていたのです。
人の評価を操る連鎖
注意して見ていると、その同僚が口にする言葉には決まった型がありました。
標的は新入社員や復帰したばかりの先輩など、強く言い返せない立場の人ばかりです。
「あの人、最近危ないかも」「数字、誰かフォローしてる?」軽い心配の体で投げ込まれた一言が、聞いた人の中に小さな疑念を残します。
やがて誰かが標的に冷たく接し始め、嫉妬と疑いが連鎖していくのです。
本人はその輪の外で、いつも変わらない笑顔を返していました。
誰かが孤立し始めるたびに、面倒見のよい先輩としての立ち位置だけが強くなっていきます。
私のミスを部署をまたいで広めていたと別の同僚から教えられ、その日から手帳に発言を残すようになりました。
日付、場所、語尾までを淡々と書き写していきます。
仮面を取り換えた翌朝
三か月分が手帳一冊になった頃、私は直属の課長に時間をもらいました。
記録を一枚ずつ机に並べ、関係する発言を順に読み上げていきます。
課長の表情が、途中で何度か止まりました。
翌朝、出社してきたその同僚の様子は、まるで別人のようでした。
声の大きさが落ち、廊下で笑い合う輪からも自然に距離を置いています。私に対しては、急に丁寧すぎる敬語を使い始めたのです。
傾きかけていた仕事はすぐに整い、評価面談の空気もうっすらと戻りました。
職場として見れば、確かに静かな反転が起きた瞬間です。
それでも、あれほど自然に人を動かそうとしていた人物が、課長の一声であっさり別の顔に切り替えた事実のほうが、私には恐ろしく映りました。
仮面の数だけ、本性が見えにくくなる気がしたのです。
退職してずいぶん経った今も、似た気配の人と会うと反射的に距離を取ります。あの笑顔の冷たさは、職場を離れたあとも背筋に張りついて消えてはくれませんでした。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














