「使えねえな、本当に」新人を詰めるチームリーダー。だが、人事部に送られたボイスレコーダーで状況が一変
誰も止められなかった
職場のチームリーダーは、機嫌が悪いと言葉が荒くなる人だった。
指摘の内容より言い方がきつく、新人の女性が標的になることが多かった。ミスを指摘するだけでなく、語気が上がって詰め寄るような口調になることがあった。
「使えねえな、本当に」
フロアに響く声に、周囲は固まるしかなかった。小声で返事をするたびに追い打ちをかけるような問いかけが続き、見て見ぬふりをするしかなかった。
自分もそのひとりだった。
新人の女性は次第に発言が減り、表情もかたくなっていった。昼休みも自席でひっそりしていることが増え、そしていつの間にか、出勤そのものが不定期になっていった。明らかに様子がおかしかったが、チームの誰かが上に話を通す様子もなく、空席だけが増えていった。
何もできなかった、という後味がずっと残っていた。声をかければよかった。
一言でも言えばよかった。でも、できなかった。あの子が来なくなってから、その後悔をチーム全員がそれぞれ抱えているようだった。誰も口には出さなかったが、雰囲気でわかった。
録音されていた日々
彼女が来なくなってしばらくした頃、会社宛に封筒が届いた。
「人事部へ」と書かれた小包の中に入っていたのは、小型のボイスレコーダーだった。
総務の担当者が開封し、内容を確認した後で人事に引き継がれた。
録音にはチームリーダーの声があった。強い口調で新人に言葉をぶつけている場面が、日付と時刻とともに複数収められていたという。
あの日々が、すべて記録されていた。言葉を受けながら、ずっとポケットの中でボイスレコーダーを押していたのだろう。
「証拠が届いた」
チームの中で、誰かがそうつぶやいた。
人事が動き、チームリーダーは別部署へ異動になった。それ以降、あの緊張感が戻ることはなくなった。
声を上げられなかった自分が情けなかったし、あの子が一人でずっと記録していたことを思うと、胸が痛かった。
でも、黙って行動していた強さに、何かを教えられた気がした。
誰も動けなかった時間を、あの子はひとりで埋めていた。封筒が届いた朝、長い間つかえていたものがすっと消えた気がした。
フロアに「使えねえな、本当に」という声が二度と響かなくなったのは、あの封筒のおかげだ。あの子が今どこで何をしているかは知らないが、あの行動を思い出すたびに、声を上げられない人にも届く方法はあるのだと、勝手に背中を押された気持ちになる。ちゃんと伝わっていてほしい、と今でも思う。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、20代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














