「やましいことは何もない!」そう言い切った夫。だが、浮気の証拠を突きつけた結果
疑わなかった五年
夫は、まじめが服を着て歩いているような人だった。
結婚して五年、不倫なんて言葉は私たちの暮らしから一番遠いところにあると信じていた。
その油断が、ほんの少しの違和感を見過ごさせていたのかもしれない。たまたま手にした夫のスマホに、見慣れない名前からのメッセージが届いていた。
「また早く会いたい」
たった一行。けれど、夫婦の間にすっと冷たい線を引くには十分だった。
「この人とは、何なの」
「職場の後輩だよ。相談に乗ってるだけ」
夫はそう言って、私からスマホをそっと遠ざけた。
「相談に乗ってるだけで、こんな文面になる?」
「考えすぎだって」
「やましいことは何もない!」
その一言を、夫はやけにきっぱりと繰り返した。
きっぱりしすぎている、と私は思った。
崩れていった強弁
問い詰めても認めないなら、認めざるを得ない形にすればいい。私はしばらく時間をかけて、消えていたお金の流れなどを集めた。
急ぐ必要はなかった。
むしろ、彼が油断しているうちのほうが都合がいい。証拠は黙っていても消えない。
感情を顔に出さず、一枚ずつ確実に裏を取っていった。
休日の朝、テーブルに紙を伏せて置く。最初にめくったのは、海沿いの宿で寄り添う二人の写真だった。
「やましいことがないなら、これは説明できるよね」
「……それは、たまたま予定が重なって」
夫の口調から、勢いが抜けていく。
私は次の紙をめくった。夫名義の、宿泊予約のメールだった。
「たまたまで、あなたの名前で部屋を取るの?」
「いや、それは、向こうの分も一緒にしただけで……」
言い訳が、もう前後でつながっていない。
最後に並べたのは、同じ相手との予約が何度も続いた履歴だった。
「もう終わり?」
夫は紙を見つめたまま、肩を落とした。やがて、しぼり出すように口を開いた。
「…ごめん」
あれほどの自信は、記録の前であっけなく崩れ落ちた。
追い詰められた側へ
立場は、その朝を境にひっくり返った。私を言いくるめようとしていた人が、今は私の出方を恐れている。
「これからのことは、あなたじゃなくて私が考える」
「……わかった」
夫は、それしか返せなかった。目を合わせようとせず、ただ床の一点を見つめている。
「考えすぎだ」と私を責めていた頃の余裕は、どこにも残っていなかった。
もう迷いはなかった。言い逃れの一つひとつが消えていったその朝に、私は私の道を選び直した。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














