「お子さんを見せてください」突如、家を訪れた二人組み→思わぬ理由に驚いたワケ
旅行帰りの訪問者
連休に家族で出かけ、旅の余韻もまだ冷めやらない週明けの昼だった。玄関先に、スーツ姿の男女が二人、思いつめた顔で並んで立っていた。
「児童相談所から参りました」
穏やかな口調のあとで、女性の相談員がまっすぐに告げた。
「お子さんを見せてください」
「え、うちがですか」
何かの手違いだと信じたくて、私はまず落ち着いて話を聞くことにした。旅行かばんもまだ片づいていない玄関に、二人を通す気にはなれなかった。
匿名の一報
聞けば、近所の誰かから匿名の連絡が入ったという。2時間以上も子どもの泣き声が続き、大きな怒鳴り声もしていた。そう書かれていたそうだ。
身に覚えのない話に、頭のなかがぐるぐると回った。我が家では、そんな声が響いたことは一度もない。
「その方は、はっきりお宅だと言っているんです」
「はっきり、って……本当に、うちのことなんでしょうか」
相談員の口ぶりは、こちらを疑っているというより、確認を急いでいるようだった。手元の書類を見ながら、彼女は日付を読み上げた。それを聞いた瞬間、私は即座に答えた。
「この日は家族で旅行中です」
言い終わらないうちに、私はスマートフォンの写真を開いて、画面を差し出していた。
「この時間、うちは県外のホテルにいました」
撮影日時の入った家族写真が、何枚も並んでいる。子どもたちの笑顔も、見慣れない駅前の風景も、朝食のバイキングの皿も、すべてがその日を指していた。相談員は一枚、また一枚と、画面を指でたどっていく。
証明された潔白
やがて、二人の相談員の表情がゆるんだ。顔を見合わせ、どちらからともなく肩の力が抜けていく。
硬かった声が、少しだけやわらかくなった。
「はっきりして、よかったです」
そう言って頭を下げ、帰っていく背中を見送りながら、私は長い息を吐いた。緊張で強ばっていた指先が、ようやく動いた。
あとで分かったのは、少し離れた家の泣き声を、通報者が方角ごと勘違いしていたらしいということ。決めつけの一本の連絡が、まったく無関係の我が家に向けられていたのだ。
「うちだと決めつけられたのは、正直こわかったです」
近所で顔を合わせたとき、私はそれだけを穏やかに伝えた。相手は言葉に詰まり、それきり探るような視線は向けてこなくなった。
それでも、証拠がすべてを覆してくれた。もう、誰の声かを詮索する気は起きない。晴れた空の下、私は玄関の鍵を、いつも通りに閉めた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














