「成人までにかかったお金を返してほしいの」と主張する母。後日、通帳を記帳してわかった母の本当の顔
冗談だと思って笑っていた
実家に帰るたび、母は同じ話をしていました。私が働きはじめて何年か経ったころからです。
「成人までにかかったお金を返してほしいの」
「習い事も進学も、あんたが一番お金かかったんだから」
笑いながら言うので、私も笑って流していました。母は昔から家計のやりくりを一人で背負ってきた人で、冗談の中に少しだけ本気が混じっているのは、なんとなく分かっていたんです。
それでも、まさか本当に動くとは思っていませんでした。
記帳して分かったこと
気づいたのは、その2年ほど後でした。
まとまった支払いをしようとして残高を見ると、数字が記憶より100万円足りません。
記帳すると、何度かに分けて引き出された履歴が並んでいました。
通帳も印鑑も、実家の私の部屋に置いたままにしていたものです。
台所で通帳を広げると、母はすぐに認めました。
「私が下ろしたのよ。前から言ってたでしょう」
「言ってたけど、いいとは一度も言ってないよ」
「親なんだから、そのくらい当たり前でしょう」
声を大きくしたら終わりだと思って、私は向かいの椅子に座りました。
「何に使ったのか、それだけ教えて」
母は答えませんでした。ただ、湯呑みへ伸ばした手が途中で止まったのが見えます。
使い道を聞かれることまでは、想定していなかったのだと思います。私もそれ以上は問い詰めず、その日は帰りました。
言えばよかった、と聞こえた
2週間後、封筒に入った50万円を渡されました。翌月の朝、残りの50万円が同じ封筒で戻ってきます。
2回に分けて、100万円がそろいました。
「返したんだから、もうごちゃごちゃ言わないでちょうだい」
「うん。受け取ります」
私が封筒を鞄にしまうと、母は何か言いかけて、そのまま口を閉じました。強い顔ではありませんでした。目だけが泳いで、流しのほうへ向いてしまいます。
「……先に言えば、よかったんだよね」
聞こえるか聞こえないかの声でした。聞き返さずに、私は湯呑みを片づけました。
通帳と印鑑は、その日のうちに自分の家へ持ち帰っています。
帰り際、玄関まで出てきた母が、サンダルのまま言いました。
「次に要るときは、ちゃんと言うから」
「うん。言ってくれたら、話は聞くよ」
母とは今も週に一度は電話をしています。100万円のことは、お互いに持ち出しません。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、50代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














