
引っ越して数日後、隣人が訪ねてきた
新しい家での暮らしが始まって、まだ数日しかたっていないころでした。
荷ほどきの合間にひと息ついていると、インターホンが鳴りました。
画面に映っていたのは、見覚えのない年配の女性です。
玄関を開けると、女性は隣の家に住んでいると名乗り、少しためらうように二階を見上げました。
「ベランダの洗濯物、目につくのよね」
思いがけない言葉に、私はすぐには意味が分かりませんでした。
話を聞くと、女性は庭で過ごすことが多く、そこから我が家の二階のベランダがよく見えるそうです。
風が吹くたびに洗濯物が揺れるのが気になるので、できれば低い位置に干すか、外干しを控えてほしいと言われました。
「そうなんですね……」
我が家では、もともとベランダに付いていた物干し金具を普通に使っているだけです。
洗濯物が隣の敷地にはみ出したり、落ちたりしたこともありません。
とはいえ、引っ越したばかりで隣人と険悪になるのも避けたいところです。その場では返事を決めず、「家族とも相談してみます」とだけ伝えました。
できる配慮と、できないことを分ける
その晩、帰宅した夫に隣人とのやり取りを話しました。
「庭から見えるのが気になるみたい。干し方を変えてほしいって」
夫は少し考えてから、ベランダを確認しました。
「隣にはみ出してるわけじゃないし、全部言われた通りに変える必要はないと思うよ。ただ、こっちが困らない範囲で工夫できるなら、それくらいはしてもいいんじゃない?」
私も同じ気持ちでした。
そこで、背の高い衣類はなるべくベランダの内側に干し、外から目立ちにくい位置へ寄せることにしました。
ただし、洗濯物そのものを外に干さないというところまでは応じないことにしました。
こちらにも毎日の生活があります。できる範囲で配慮することと、生活の仕方まで相手に決められることは別だと思ったのです。
もう一度言われたとき、答えを決めていた
数日後、庭先で隣人と顔を合わせました。
女性は我が家のベランダを見てから、「やっぱりまだ見えるのね」と言いました。
私は少し緊張しましたが、あらかじめ夫と話していた通りに答えました。
「なるべく内側に干すようにはしています。でも、外干し自体をやめるのは難しいです」
女性はしばらくベランダを見上げていましたが、「そう」とだけ言って家へ戻っていきました。
それ以降、洗濯物について直接何か言われることはありませんでした。
隣近所だからこそ、相手の希望をすべて断るのも、すべて受け入れるのも難しいものです。こちらに負担のない範囲では配慮し、それ以上はできないと伝える。そのくらいの距離感が、長く暮らしていくうえではちょうどいいのかもしれないと思った出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














