「俺がいつでも助けに行ったるからな」強面の常連客。だが、帰り際の冗談に思わず笑った瞬間
少し話しかけにくかった常連客
五十を過ぎた今でも、ときどき思い出す出来事があります。まだ私が二十代で、窓口の受付をしていたころの話です。
その窓口には何人か常連のお客様がいました。
その中に、同僚たちからも「ちょっと話しかけにくいね」と言われている男性がいました。
背が高く、がっしりとした体格で、眉も太く、黙っていると少し怖く見える方でした。私も最初のころは、その人が窓口に来ると少し緊張していました。
「これ、記帳頼む」
いつも用件は短く、それ以上ほとんど話しません。ただ、実際に接してみると、乱暴なところはまったくありませんでした。
手続きの確認に時間がかかってしまったときも、急かすことなく待っていてくれます。
「慌てんでええよ」
そんな一言をかけてもらったこともあり、私は次第に、見た目ほど怖い人ではないのだと思うようになりました。
帰り際に呼び止められた朝
ある朝も、その人はいつものように窓口へやってきました。
私は預かった通帳の手続きを済ませ、「お待たせしました」と返しました。男性は通帳を受け取ると、そのまま帰るのだと思いました。
ところが数歩進んだところで足を止め、こちらを振り返ったのです。
「ついでに言うが」
私は何か確認し忘れたのかと思い、思わず姿勢を正しました。
すると男性は真顔のまま、こんなことを言いました。
「あんたがもし、どこかに閉じ込められて出られんようになったら、俺がいつでも助けに行ったるからな」
あまりに突然の言葉で、私は一瞬、何と返せばいいのか分かりませんでした。
なぜ「閉じ込められる」という話になったのかは、今でも分かりません。
冗談だったのか、その人なりに励ましてくれたのか、それも聞けないままでした。
男性は小さくうなずくと、そのまま何事もなかったように帰っていきました。
少し遅れて、私はその背中に「ありがとうございます!」と声をかけました。
やり取りを聞いていた隣の同僚と顔を見合わせると、二人とも思わず笑ってしまいました。
最初は怖そうに見えていた人から突然もらった、不思議で、どこか温かい一言。何十年たった今でも忘れられない、窓口での思い出です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














