「商品を用意して、家まで届けろ」箱が潰れた商品を持ち込んだ客。だが、騒ぎを聞きつけた店長が対応した結果
箱の角が潰れた商品を手に
十年ほど前、私がドラッグストアでアルバイトをしていた頃のことです。
ある日、レジに立っていると、五十代くらいの男性が商品を手に足早に近づいてきました。
男性がレジ台に置いたのは、少し前に当店で購入したという箱入りの商品でした。見ると、箱の角がわずかに潰れています。
「買ったときからこうなっていた。傷物を売るなんてどういうことだ」
男性はそう言いながら、箱を私の目の前に突き出しました。
私は購入時のレシートを確認し、まずは同じ商品と交換できないか在庫を調べました。
しかし、その商品はすでに売り切れており、次回の入荷日も決まっていませんでした。
そこで、交換品をすぐに用意できないことを謝罪し、返金で対応させていただきたいと伝えました。
すると、男性は納得できない様子で声を荒らげました。
「返金すれば済む話じゃないだろ。明日までに商品を用意して、家まで届けろ」
さらに、店側の費用で取り寄せて配達するよう求めてきたのです。
私はもう一度、在庫がなく、入荷日も分からないことを説明しました。
しかし、男性はレジ台に身を乗り出し、何度も同じ要求を繰り返します。
後ろには会計を待つお客様の列が伸び始めていました。周囲の視線を感じながら、私はどう対応すればよいのか分からず、ただ謝ることしかできませんでした。
店長が繰り返した、変わらない説明
騒ぎに気づいた店長が、レジまでやってきました。
私から事情を聞いた店長は、男性にあらためて謝罪したうえで、落ち着いた声で説明しました。
「申し訳ございません。交換できる在庫がないため、現時点で可能な対応はご返金となります」
しかし、男性は店長にも強い口調で迫りました。
「店が売った商品だろ。家まで届けるのが誠意じゃないのか」
店長は声を荒らげることなく答えました。
「ご不快な思いをさせてしまったことはお詫びいたします。ただ、入荷時期が決まっていない商品を明日までにご用意し、ご自宅へお届けすることはできかねます」
男性は何度も言葉を変えながら、交換品の取り寄せや配達を求めました。
それでも店長は、返金対応はできること、希望すれば入荷後に連絡することは可能であることを、順番に説明し続けました。
しばらくすると、男性もこれ以上要求しても対応が変わらないと分かったようでした。
「もういいよ」
そう言って返金を受け取ると、不満そうな表情のまま店を出ていきました。
男性がいなくなったあと、店長は私に「最初から無理な要求まで受け入れようとしなくていい。困ったときはすぐ呼んで」と声をかけてくれました。
お客様に謝ることと、できない要求まで引き受けることは違います。
相手の言葉に流されず、可能な対応を冷静に伝え続けた店長の姿は、今でも強く印象に残っています。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














