「普通、作り直しません?」ラーメン店で卵の入れ忘れを指摘した客。だが、店員が毅然と対応した結果
昼のラーメン店で、隣の声だけが響いていた
遅めの昼食をとろうと、私はラーメン店に入った。
先に注文と支払いを済ませてから席に着く店で、昼の混雑もようやく落ち着いたころだった。
隣に座った女性は、鞄を膝に抱えたまま何度も腕時計を見ていた。少しそわそわしていて、急いでいるように見えた。
やがてラーメンが運ばれてくると、女性は丼をのぞき込み、すぐ店員を呼び止めた。
「あの、すみません。卵、頼んだんですけど……入ってないですよね?」
店員も丼を確認し、はっとした顔をした。
「あっ……申し訳ありません。こちらの入れ忘れです。すぐお持ちします」
「お願いします。ちょっと急いでるので……」
女性はそう言いながら、また時計に目を落とした。
ほどなくして味付け卵が運ばれてきた。けれど、それを見た女性は少し困ったように眉を寄せた。
「えっと……これ、あとからのせるんですね?」
「はい。申し訳ありませんでした」
「最初から一緒に頼んでたから、ちょっと気になって。こういうものなんですか?普通、作り直しません?」
責め立てるというより、納得できない気持ちがそのまま声に出てしまったようだった。
店員がもう一度謝ると、女性は手元のレシートを見た。
「あと、卵の分ってちゃんと会計に入ってます?私、もう払ってますよね?」
「はい、少々お待ちください。確認します」
「すみません、本当に時間なくて……。できれば早めにお願いします」
声には焦りがにじんでいた。店員も急いで確認していたが、女性の言葉が続くたびに、少し困った表情になっていく。
隣で食べていた私も、いつの間にか箸が止まっていた。
店長が確認したのは、書かれている事実だった
そのとき、奥から店長らしい人が出てきた。
店員から簡単に事情を聞くと、女性の前に置かれたレシートへ目を向ける。
「お待たせしてすみません。レシート、ちょっと見てもいいですか?」
女性が差し出すと、店長は一度確認してから指を添えた。
「レシートに全部、書いてあると思います。卵はこちらですね。代金もちゃんと入っています」
女性も顔を寄せて確認する。
「……あ、本当だ。ありますね」
少しだけ声の勢いが弱くなった。
店長はそのまま、穏やかな口調で続けた。
「入れ忘れたのはこちらなので、そこは本当に申し訳ありません」
「いえ……ただ、最初から頼んでたのにと思って」
「そうですよね。せっかく追加していただいたのに、すみません」
店長がそう返すと、女性も少し表情をゆるめた。
「作り直すこともできます。ただ、今からですと少しお時間がかかってしまいます。お急ぎでしたら、このまま召し上がっていただくこともできますが、どうされますか?」
女性は時計を見て、それから丼を見た。
「……じゃあ、このままでいいです。もう時間ないので」
「分かりました。本当に申し訳ありませんでした」
「いえ、もう大丈夫です」
その言葉を最後に、女性は味付け卵を丼に入れ、ようやく箸を取った。
店員も小さく頭を下げて奥へ戻っていった。
少し前まで張りつめていた店内に、また湯切りの音や食器の触れ合う音が戻ってくる。
私も止めていた箸を動かした。
店側にミスがあったのは事実だし、急いでいた女性が焦る気持ちも分かる。ただ、そこで互いに声を強くするのではなく、「何が起きたのか」「どうするのか」を一つずつ確認していく店長の話し方が印象に残った。
誰かを言い負かしたわけではない。それでも、さっきまで険しかった女性の表情が少しやわらいだのを見て、伝え方ひとつで空気は変わるのだと思った。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














