「お前じゃない、さっさと呼べと言っただろう」電話で用件を言わない男性。だが、院長が電話に出ると、相手の態度が一変
用件を聞いても、返ってくるのは同じ言葉だけ
歯科医院で受付をしていたころ、対応に困る電話を受けたことがあります。
電話の相手は若そうな男性でした。予約なのか、治療についての相談なのかを確認しようとしましたが、こちらの質問には答えてくれません。
「歯科衛生士さんに代わって」
「かしこまりました。どのようなご用件でしょうか?」
「いいから代わってくれればいいんだよ」
少し苛立ったような声でした。
誰に代わればいいのかも分からず、用件も教えてもらえません。このまま誰かに電話を回していいものか迷い、私は近くにいた院長へ小声で事情を伝えました。
「用件を聞いても教えてくれなくて、衛生士に代わってほしいとだけ言われています」
すると院長は少し考えてから、
「分かった。じゃあ、一度私が話を聞くよ」
と言って、受話器を受け取ってくれました。
院長の声を聞いた途端、相手の口調が変わった
院長はいつも通りの声で電話に出ました。
「お電話代わりました。どうされましたか?」
その直後、受話器から大きな声が聞こえました。
「お前じゃない、さっさと呼べと言っただろう」
そして、院長が何か返す間もなく電話は切れてしまいました。
「……何だったんだろうね」
院長は受話器を見ながら、困ったように言いました。
私もすぐには言葉が出ませんでした。診療室から聞こえてくる器具の音や、待合室で雑誌をめくる音だけが、妙にはっきり聞こえたのを覚えています。
しばらくして院長は「まあ、またかかってきたら教えて」と言い、診療室へ戻っていきました。
一人で判断しなくてもいいと分かった
結局、その男性から再び電話がかかってくることはありませんでした。
あとで先輩に出来事を話すと、
「それは困るね。用件も分からないんじゃ、勝手に回せないよ」
と言われました。
その言葉を聞いて、少し肩の力が抜けました。電話を受けたときは、「自分の対応が悪かったのかな」と一瞬考えていたからです。
それ以来、相手が用件を話してくれなかったり、受付だけでは判断できなかったりする電話は、無理に一人で対応しないようになりました。
近くにいる先輩や院長に状況を伝えて、どう対応するか相談する。それだけです。
受付にいると、さまざまな電話がかかってきます。全部を自分だけで何とかしなくてもいい。あの一本の電話は、そのことを覚えるきっかけになりました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














