「ポイントカード、どこだったかしら」レジで焦って探している客。だが、後ろの男性の何気ない一言で空気が一変
会計の途中で、手が止まった
レジに立っていたころ、夕方になると会計待ちの列が途切れない日がよくありました。
その日も何人かのお客さまが並んでいて、私は順番に商品を通していました。次のお客さまは、買い物かごを置いたあと、財布を開きながら「あれ」と小さく声を漏らしました。
「ポイントカード、どこだったかしら」
財布の中には見当たらなかったようで、今度は鞄の中からカードケースを取り出しました。
一枚ずつめくって探していましたが、なかなか見つかりません。後ろに人が並んでいることが気になったのか、しだいに手の動きも速くなっていきました。
「すみません、ちょっと待ってくださいね」
私は「大丈夫ですよ」と答えましたが、お客さまは何度もケースをめくっています。
私としては急かすつもりはありません。それでも、後ろに列があるだけで焦ってしまうことはあるのだと思います。
すると、すぐ後ろに並んでいた男性が静かに声をかけました。
「大丈夫ですよ。私は急いでいないので、ゆっくり探してください」
その一言で、探す手が止まった
お客さまは振り返り、少し驚いたような顔をしました。
「あら、すみませんね」
男性は「いえいえ」と短く返しただけでした。
すると、お客さまは一度カードケースを閉じ、落ち着いて開き直しました。
今度は一枚ずつゆっくり確認していきます。すると間もなく、「あった」と声を上げました。
慌てて何度も見返しているうちに、見落としていたのかもしれません。
カードを受け取り、会計を済ませると、お客さまはもう一度男性に頭を下げました。
「待ってもらって、ありがとうございました」
「大丈夫ですよ」
男性はそれだけ答え、自分の買い物かごをカウンターに置きました。
急かさなくても、焦らせてしまうことがある
その出来事が妙に印象に残ったのは、私自身も「急かしてはいけない」と思って黙って待っていたからです。
けれど、何も言わずに待っているだけでは、相手にはこちらの気持ちまで伝わりません。
後ろに人が並んでいれば、それだけで「早くしなければ」と感じてしまうこともあります。
あの男性は、誰かを注意したわけでも、列を仕切ったわけでもありません。ただ、自分は急いでいないと伝えただけでした。
それだけで、お客さまの焦りが少しほどけたように見えました。
それ以来、レジで何かを探しているお客さまには、できるだけ「大丈夫ですよ」「ゆっくりで構いませんよ」と声をかけるようになりました。
待つことと、待っていることを伝えることは、少し違うのだと気づいた出来事です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














