「仕事はちゃんとうまくいってるのか」三回忌で夫に絡み始めた叔父。ビールをこぼした直後、住職がかけた言葉
叔父の前だけ、徳利が何度も空いていた
数年前、夫の祖父の三回忌に出たときのことです。
本堂での法要が終わると、親族は近くの料亭へ移り、広間で会食をすることになりました。
私の席からは、夫の叔父の様子がよく見えました。祖父の次男にあたる人で、席に着いて間もないころから、自分で徳利を傾けていました。
「すみません、こっちにも一本お願いします」
仲居さんが新しい徳利を運んでくるたび、空いたものが下げられていきます。
一方で、叔父の前の料理にはほとんど箸がついていませんでした。
最初のうちは、祖父との思い出話を大きな声で話していました。周りも笑いながら聞いていたのですが、しばらくすると話題が親族それぞれの近況へ移っていきました。
そして叔父が、斜め向かいに座っていた夫へ顔を向けました。
「仕事はちゃんとうまくいってるのか」
夫は少し間を置いてから、「まあ、何とかやってますよ」とだけ答えました。
ところが叔父は、それでは足りなかったようです。
「何とかって何だ。ちゃんと答えられないのか」
「叔父さん、その話はまた今度にしましょう」
夫がそう返すと、叔父の声がさらに大きくなりました。
「何だ、その言い方は」
その拍子に叔父の手がグラスに当たり、ビールがこぼれました。隣に座っていた親族の黒い上着まで濡れ、近くにいた子どもたちも驚いて顔を上げました。
さっきまで続いていた話し声が、一度に止まりました。
住職が静かに話題を戻した
そのとき、同じ席についていた住職が叔父へ穏やかに声をかけました。
「今日はお祖父さまを偲ぶ席ですから、そのお話はまた別の機会になさってはいかがですか」
責めるような言い方ではありませんでした。
続いて義父も、「今日はこのくらいにしよう」と叔父に言いました。
叔父は何か言い返しかけましたが、周囲が静まり返っていることに気づいたのか、そのまま口を閉じました。
仲居さんがこぼれたビールを拭き、新しいおしぼりとお茶を持ってきました。
「叔父さん、少し食べたほうがいいですよ」
夫がそう言うと、叔父は返事をせず、湯呑みに手を伸ばしました。それからは酒を追加で頼むこともなく、残っていた煮物や刺身を少しずつ食べていました。
会食はそのまま最後まで続きました。締めの挨拶では義父が立ち、祖父が晩年まで畑仕事を続けていたころの話をしました。
帰り際、叔父はビールをこぼしてしまった親族のところへ行き、「さっきは悪かった」と短く頭を下げていました。
夫にも何か言うのかと思いましたが、その日は何もありませんでした。
ただ、店を出た夫は私の隣で小さく息を吐きました。
「あそこで話が終わってよかったよ」
私も同じ気持ちでした。
誰かが強く言い負かしたわけではありません。それでも、故人を偲ぶために集まった席だからこそ、これ以上続けないほうがいいと叔父自身も気づいたのかもしれません。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














