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2026.09.08(Tue)

「あんた、喋り過ぎだ」20年通ってくれた常連客。だが、接客を変えたあとに起きたこと

「あんた、喋り過ぎだ」20年通ってくれた常連客。だが、接客を変えたあとに起きたこと

鏡ごしに言われた「あんた、喋り過ぎだ」

理容店を始めて二十年ほどになります。

開店したころから通ってくれている常連もいて、その男性もその一人でした。

いつもの椅子に座ると、男性は昔の仕事のことや家族のことをよく話します。

私は聞きながら髪を切り、ときどき短く相槌を返す。それが長い間、当たり前になっていました。

その日も男性が仕事の話をしていたので、私は後ろ髪にバリカンを当てながら聞いていました。

話が途切れたところで、何気なく声をかけました。

「そういえば、去年の暮れは寒かったですね」

「そうだな」

返事は短く、その直後、鏡の中の男性の表情が変わりました。

「あんた、喋り過ぎだ」

思わず手を止めそうになりました。

「こっちは髪を切りに来てるんだ。話を聞きに来てるんじゃない」

私は「失礼しました」とだけ返し、それからは必要なこと以外、口にしませんでした。

閉店後、妻にその話をすると、妻は少し驚いた顔をしました。

二十年近く通ってくれている人から言われただけに、私も思った以上に引っかかっていたのだと思います。

世間話をやめることにした

実は少し前にも、別の常連から施術中に何度か「早くやれ」と言われたことがありました。

その人が何を理由にそう感じたのかは分かりません。ただ今回のことまで重なり、私は「話をしながら切っていると、手が遅いように見える人もいるのかもしれない」と考えるようになりました。

そこで翌日から、自分から世間話を始めるのをやめました。

挨拶と長さの確認、仕上がりの確認だけ。あとは黙って手を動かすことにしました。

やがて、「喋り過ぎだ」と言った常連がまた来店しました。

「今日はいつもの長さでよろしいですか」

「ああ」

それきりです。

向こうから天気の話を振られても、「そうですね」と短く返しました。

鋏の音と、蒸しタオルを用意する音だけが店に残りました。

帰り際、男性は少し不思議そうにこちらを見ましたが、私はいつもどおり頭を下げました。

その次の来店も、同じように接客しました。

3回目の予約欄は、白いままだった

ところが、それから次の予約は入りませんでした。

一度目、二度目と来ていたいつもの時期を過ぎても電話はなく、月が変わっても予約帳の欄は白いままでした。

「あの人、来なくなったわね」

妻に言われ、私は「そうだな」とだけ返しました。

何が正解だったのかは今でも分かりません。話しかけられるのが嫌な日もあれば、いつもの会話がなくなると寂しく感じる日もあるのでしょう。

朝、店の椅子を拭き終えると、ラジオの声だけが静かな店内に流れます。私はその日の予約帳を開いてから、いつものように戸を開けました。


※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた60代以上男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています

※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。

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