「どこの馬の骨かも分からないと思ってた」結婚の顔合わせで笑う義父。だが、黙って聞いていた父が返した一言
顔合わせの席で、母の手が止まった
四十を過ぎてから、私は結婚することになりました。
今の夫との両家の顔合わせは、川沿いの店の奥にある座敷で行いました。長い卓をはさんで両家の両親が向かい合い、私と夫はそれぞれの両親のそばに座っていました。
最初のうちは穏やかな雰囲気でした。義母と母は料理の話をし、父は夫に仕事のことを聞いています。
私は緊張しながらも、「このまま和やかに終わればいいな」と思っていました。
空気が変わったのは、料理が一皿下げられたころです。
義父が私を見て、笑いながら言いました。
「いやあ、最初に結婚すると聞いたときは驚いたよ。どこの馬の骨かも分からない人だと思ってたからね」
おそらく、義父としては冗談のつもりだったのでしょう。
けれど私は返す言葉が見つからず、曖昧に笑うことしかできませんでした。
母も箸を持ったまま動きを止めています。
夫が困った顔で、「父さん、それはちょっと…」と声をかけました。
義父はそこで初めて周囲を見回し、それでもまだ笑顔のまま言いました。
「いや、悪い意味じゃないんだよ。どんな人なんだろうって心配してたって話でさ」
義母が小さくため息をつきました。
「あなた、もういいでしょう」
座敷が静かになりました。
黙っていた父が、盃を置いた
それまで黙って聞いていた父が、手にしていた盃をそっと卓へ置きました。
怒るのではないかと思いましたが、声は静かでした。
「親として心配される気持ちは分かります」
そう言ってから、父は少し間を置きました。
「でも、せっかくの席ですから、昔どう思っていたかより、これからの話をしませんか」
責めるような言い方ではありませんでした。
それでも、父が私のために言ってくれていることは伝わりました。
夫もすぐに「そうだね。式のことも相談したかったし」と話を引き取りました。
義母も「秋ごろって話してたわよね」と続けます。
義父は少し気まずそうに湯呑みを持ち上げ、それから私のほうを見ました。
「……言い方が悪かったね。ごめんよ」
私は「いえ」と短く答えました。
ちょうどそのとき襖が開き、次の料理が運ばれてきました。止まっていた会話も、少しずつ結婚式や今後の予定へ戻っていきました。
帰り際、父と二人になったところで、私は「さっき、ありがとう」と伝えました。
父は少し照れたように笑いました。
「あの場で言う話じゃないと思っただけだよ。せっかく両家で集まったんだから」
大声を出したわけでも、義父を言い負かしたわけでもありません。
それでもあのとき、父が私の気持ちを守りながら席を元に戻してくれたことを、今でもよく覚えています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














