付き合ってもいない男子から「今から家に行く」と言われた。だが、思わぬ告白に戸惑ったワケ
受話器の向こうで、同じ言葉がくり返された
学生だったころ、同じクラスによく話しかけてくれる男子がいた。休み時間に一緒に笑うくらいの、友達としての関係だった。付き合っていたわけでも、そういう約束をしていたわけでもない。
その夜、家の電話が鳴った。受話器を取ると、教室で聞き慣れた声だった。
「今から家に行く」
「え?なんで?」
思わず聞き返すと、彼は少し黙ってから答えた。
「ちょっと話したいことがあるんだ」
「電話じゃだめなの?」
「いや、直接話したい」
私がどう返そうか迷っているうちに、電話は切れた。
冗談なのか、本当に来るつもりなのか分からないまま、しばらく受話器を見つめていた。
すると少しして、また電話が鳴った。
「さっきも言ったけど、今から家に行くから」
「え、本当に来るの?」
「うん。もう行くから」
今度ははっきりと、本気なのだと分かった。
受話器を戻したあと、手のひらがじっとりしていることに気づいた。家族はまだ帰っていない。私は玄関へ行き、鍵がかかっていることをもう一度確かめた。
教室では普通に話せる相手だった。それなのに、こちらが来てほしいと言っていないのに夜の家まで来ようとしている。そのことが急に怖くなった。
ドアには触れないまま、伝えたこと
十分ほどして、インターホンが鳴った。
画面を見ると、彼が一人で立っていた。私は玄関のドアには近づかず、室内のインターホンから応答した。
「……来たよ」
いつも学校で聞くのと同じ声だった。
「うん。でも、ごめん。今日は開けない」
「え?なんで?」
本当に意外そうな声だった。
「急に来られても困るよ。話があるなら、明日学校で聞くから」
しばらく沈黙があった。
「俺、今日言いたかったんだ」
「何を?」
「…好きなんだ。ずっと言おうと思ってた」
突然の言葉に、すぐには返事ができなかった。
告白されるとは思っていなかった。それ以上に、夜に突然家まで来られたことへの戸惑いのほうが大きかった。
「ごめん。今ここでは話せない」
「少しだけでもだめ?」
「今日は無理。帰って」
私がそう言っても、彼はすぐには動かなかった。
「ほんとに少し話すだけだから」
「ううん。今日は帰って」
自分でも分かるくらい、声が少し震えていた。
それでも画面の中の彼は、その場に立ったままだった。
私は少し間を置いて、もう一度言った。
「お願い。今日は帰って」
しばらくして、彼が小さく答えた。
「……わかった」
やがて画面から姿が消えた。私は外の気配がなくなるまで、室内のインターホンの前から動けなかった。
帰ってきた家族に事情を話すと、驚いた顔をされた。
「急に来たの?怖かったでしょう」
「うん。学校では普通に話してたから、余計にびっくりした」
少し話したあと、家族から「明日、学校で話せそう?」と聞かれた。
私はうなずいた。
このまま曖昧にしておくより、自分の気持ちはきちんと伝えようと思った。
次の日の昼、学校で彼から声をかけられた。
「昨日……ごめん。急に行って」
「うん。正直、びっくりした」
彼は少し気まずそうに目を伏せた。
「昨日言ったことなんだけど……返事、聞いてもいい?」
私は少しだけ間を置いた。
「ごめん。友達としては普通に話したいけど、付き合う気持ちはない」
「……そっか」
彼はそれだけ言って、少し黙った。
「わかった。昨日は急に行ってごめん」
「うん」
その日は、それ以上話さなかった。
彼が家に来ることは、それきりなかった。しばらくは少し気まずかったものの、やがて教室ではまた普通に話すようになり、漫画の貸し借りも卒業まで続いた。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














