「この肉、持ちこめますかね」ホテルの部屋で焼き肉を断られた男性客。その後、スタッフが思わず言葉に詰まった質問
フロントで男性が取り出した意外なもの
去年、旅行先のホテルに夕方到着したときのことです。
キャリーケースを引いてフロントへ向かうと、カウンターには先客の男性がいました。私はその後ろに立ち、チェックインの順番を待っていました。
男性はレジ袋を大事そうに持ち、スタッフに何か相談しようとしている様子でした。
あまりに真剣な表情だったので、部屋の設備について困っているのだろうかと思っていました。
ところが、男性がレジ袋から取り出したものを見て、私は思わず目を疑いました。
中から出てきたのは、生の薄切り牛肉のパックと、焼き肉のたれのびんだったのです。
男性はそれらをカウンターに並べ、スタッフに尋ねました。
「すみません。部屋で焼き肉ってできますか?フライパンかホットプレートを貸していただきたいんですけど」
私は思わず男性の顔を見ました。冗談を言っている様子はまったくありません。
スタッフが少し戸惑った表情を見せると、男性は慌てて言葉を続けました。
「あ、コンロがないのは分かってます。電気のやつで大丈夫なので」
さらに、申し訳なさそうに付け加えます。
「匂いが残ったら、消臭スプレーを多めに振っておくので」
どうやら男性は、本気でホテルの部屋で焼き肉をするつもりのようです。
匂いの心配までしているのに、そもそも部屋で焼き肉をしていいのかという点は気にならないのでしょうか。
あまりに真剣な様子がおかしくて、私は後ろで笑いをこらえるのに必死でした。
スタッフの案内を聞いた男性の次の質問
スタッフは少し間を置いてから、丁寧に答えました。
「申し訳ありません。お部屋での調理はご遠慮いただいているんです」
「ああ、そうなんですね…」
男性が残念そうに牛肉へ目を落とすと、スタッフは笑顔で続けました。
「よろしければ、近くの焼き肉店をご案内します。こちらの通りをまっすぐ行ったところにございますよ」
「ああ、なるほど。お店で焼けばいいのか」
男性は納得したようにうなずきました。
私もこれで話が終わると思ったのですが、男性は牛肉のパックを持ち上げ、もう一度スタッフに尋ねたのです。
「あの、そのお店って、この肉、持ちこめますかね」
まさかの質問に、私はとうとう小さく吹き出してしまいました。
スタッフも一瞬言葉に詰まったようでしたが、すぐに落ち着いた口調で答えました。
「持ち込みができるかどうかは、お店に確認していただく必要がありますね。通常は、お店で提供されているお肉を召し上がっていただく形かと思います」
「あっ、そうですよね!そりゃそうだ」
男性は照れくさそうに頭をかき、牛肉とたれをレジ袋にしまいました。
その後、男性はいったんカウンターの脇へ移り、案内された焼き肉店への道順を地図で確認し始めました。
ようやく私の順番になり、チェックインを済ませてエレベーターへ向かいました。
その途中、ふとフロントを振り返ると、男性はまだ地図を広げて真剣な顔で道順を確かめていました。
その手には、先ほどの牛肉が入ったレジ袋がしっかりと提げられています。
結局、あのお肉をどうしたのかは分かりません。
ただ、スタッフとのやり取りも、最後まで真剣だった男性の表情も忘れられず、今でも思い出すたびに笑ってしまいます。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














