「まだお茶、残ってた」初日の私に客席対応を任せた店長→失敗した私、店長が先に認めたこととは
空いたカップを下げてきて、と頼まれた
カフェで働き始めた初日のことです。
覚えることが多く、私は店長や先輩に言われたことを一つずつこなすだけで精一杯でした。
少し客足が落ち着いたころ、店長が窓際の席を見ながら言いました。
「あの席、空いたカップを下げてきてもらえる?」
見ると、二人のお客さんの前にはティーカップが二つと、ポットが一つ置かれていました。カップはどちらも空に見えます。
私はトレーを持って席へ向かい、何も考えずにカップへ手を伸ばしました。
すると、一人のお客さんがすぐに言いました。
「まだ飲み終わってない。2杯目もこれからなんだ」
私は慌てて手を引きました。ポットにはまだ紅茶が残っていたようです。
「すみません」
それだけ言って、何も下げずにカウンターへ戻りました。
店長は私を叱らなかった
トレーを抱えたまま戻った私を見て、店長はすぐに何かあったと気づいたようでした。
事情を話すより先に、窓際の席を見て言いました。
「ごめん、次は私が行く。初日から行かせて悪かった」
私は叱られると思っていたので、少し驚きました。
確かに、実際にカップへ手を伸ばしたのは私です。それでも店長は、私だけの失敗にはしませんでした。
「私も空のカップだけ見て、もう終わったと思っちゃった。ちゃんと確認すればよかった」
そう言ってエプロンを整えると、店長は自分でそのテーブルへ向かいました。
カウンターから見ていましたが、何を話していたのかまでは聞こえません。長いやり取りにはならず、店長はすぐに戻ってきました。
「まだお茶、残ってた」
それだけ言うと、いつものように仕事へ戻りました。
空に見えても、勝手に決めないようになった
その二人のお客さんは、そのあともゆっくり紅茶を飲んでいました。
帰るときには、普通に「ごちそうさま」と言って店を出ていきました。
私もそこでようやく、強く怒らせてしまったわけではないのだと分かりました。ただ、まだ飲んでいる途中だった。それだけのことでした。
横にいた先輩が、小さく笑って言いました。
「店長、何かあると自分から先に謝るんですよ」
私はその店で、それから何年か働きました。
あの日以来、カップが空に見えても、それだけで「もう下げていい」と決めつけなくなりました。ポットや料理が残っていれば様子を見て、迷ったときは「お下げしてよろしいですか」と一言確認するようになりました。
接客について教わったことはたくさんあります。それでも初日にいちばん強く残ったのは、失敗したときに誰か一人のせいにするのではなく、自分の確認不足も認めた店長の姿でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














