「ちょっと貸してあげたら?」児童館で女の子に譲るよう迫る母親。だが、黙って見ていた私の隣で息子が口を開いた
ぬいぐるみを貸してほしい男の子と、困っている女の子
小学校低学年の息子と、児童館で過ごしていたときのことです。
プレイルームにはいろいろなおもちゃが並び、息子は私の隣で木のビーズ迷路を使って遊んでいました。
近くでは、小学生くらいの女の子がうさぎのぬいぐるみを抱えていました。
そこへ、同じくらいの年の男の子がやってきました。
「ねえ、それ貸して」
そう言いながら、男の子はぬいぐるみの耳に手を伸ばしました。
女の子はぬいぐるみを胸に引き寄せます。
「まだ遊んでるから…」
すると、男の子のお母さんが近づいてきました。
「ちょっと貸してあげたら?」
女の子は困った顔をしたまま、ぬいぐるみを離しません。
そばにいた女の子のお母さんが、やんわりと声をかけました。
「すみません。まだこの子が使っているので、少し待ってもらえますか?」
ところが、男の子のお母さんは笑いながら言いました。
「そんな細かいこと言わなくても。子ども同士なんだし」
さらに女の子の肩に軽く手を置き、ぬいぐるみを指さします。
「ねえ、ちょっとだけ貸してくれない?」
女の子はうつむき、ぬいぐるみを抱く腕の力を緩めかけました。
私は、そのやり取りを見ながら迷っていました。
女の子のお母さんも困っているのは分かります。ただ、私が口を挟んで、余計に揉めてしまうのも心配でした。
黙っていた私の隣で、息子が口を開いた
そのとき、隣で遊んでいた息子が顔を上げました。
「まだ遊んでるのに、なんで貸さなきゃいけないの?」
思いがけず大きな声が出たようで、私も驚きました。
すると、近くにいたエプロン姿の職員さんがこちらを振り向きました。
「どうしました?」
職員さんが近づいてくると、女の子のお母さんが事情を伝えました。
「この子がまだ使っているんですけど、貸してほしいみたいで…」
職員さんは女の子が抱えているぬいぐるみを見て、うなずきました。
「そうだったんですね。ここでは、今使っている子が終わるまで順番を待ってもらっているんです」
男の子のお母さんは、少し不満そうに言いました。
「でも、ちょっとくらい貸してくれてもいいと思うんですけど」
「そうですね。でも、まだ遊んでいるみたいなので。順番でお願いできますか?」
職員さんは穏やかに答えると、今度は男の子の前にしゃがみました。
「使いたかったんだね。でも、今はこの子が遊んでいるから、終わるまで待とうか」
男の子は少し残念そうにしながらも、こくんとうなずき、ぬいぐるみから手を離しました。
女の子はぬいぐるみを抱き直し、ほっとしたように笑いました。
女の子のお母さんも「ありがとうございます」と職員さんに頭を下げています。
男の子のお母さんはそれ以上何も言わず、バッグを肩にかけ直すと、男の子の手を引いてプレイルームを出ていきました。
その様子を見送っていると、息子が私の顔を見上げました。
「ぼく、変なこと言っちゃった?」
「ううん。そんなことないよ」
「だって、まだ遊んでたよね?」
「うん。そうだね」
私がそう答えると、息子は安心したように笑い、またビーズ迷路で遊び始めました。
私は大人同士のトラブルになることを気にして、何も言えませんでした。
でも、息子は目の前で不思議に思ったことを、そのまま口にしただけだったのです。
その素直な一言に、少し考えさせられた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














