「このケーキでお金取るのはちょっとね」喫茶店で味に文句をつけた常連の男性。だが、隣の女性が返した何気ないひと言
常連男性が口にした遠慮のないひと言
学生時代、同級生のお母さんが営む喫茶店を、一度だけ手伝ったことがあります。
お母さんは常連さんたちから「ママ」と呼ばれていて、店内には顔なじみらしいお客さんが集まっていました。
初めて入った私にも、どこか温かい雰囲気のお店でした。
その日の昼、私はエプロンを借りて、カウンターの内側でお皿を拭いていました。
ママは注文が入るたびに、慣れた手つきでコーヒーをいれていきます。
カウンターの真ん中には、常連らしい男性が座っていました。
ママにも親しげに話しかけていましたが、その口調は少し遠慮がないように感じました。
そんな男性が、運ばれてきたケーキをひと口食べたときのことです。
「ママ、これ、前と味変わった?」
男性は首をかしげながら、ママに声をかけました。
ママがコーヒーをいれる手を止めずにいると、男性はフォークでケーキを半分に割りました。
「これ、おいしくないよ」
その声は、まわりのお客さんにも聞こえるほどの大きさでした。
さらに男性は、腕を組んで言いました。
「このケーキでお金取るのはちょっとね」
そして、鼻で笑うようにして付け足したのです。
「まあ、またがんばってや」
ママは何も言い返さず、コーヒーをいれ続けていました。
味の好みは人それぞれです。でも、ほかのお客さんもいる前で、そこまで言わなくてもいいのに。
私はそう思いながらも、手伝いに来ただけの立場で何も言えず、お皿を拭く手を止めてしまいました。
隣の女性が返した、何気ないひと言
そのとき、男性の隣でケーキを食べていた常連の女性が口を開きました。
「えっ、そう?私は今日のが一番好きだけどな」
女性は男性を責めるでもなく、不思議そうな顔でそう言いました。
男性が返事に困っていると、近くにいた別の常連さんも会話に加わりました。
「私もおいしいと思うよ」
「うん、今日のはしっとりしてるよね」
男性は何か言いかけたようでしたが、結局何も言わず、カップに目を落としました。
すると、最初に声をかけた女性がママのほうを向きました。
「ママ、これもう一つ、持ち帰りでお願いできる?」
その声を聞いて、ほかのお客さんからも注文が入りました。
「あ、こっちも持ち帰りで」
「はい、ありがとうね」
ママは小さく笑って答えました。
さっきまでケーキの味に文句を言っていた男性は、すっかり静かになっていました。
それでもケーキを残すことはなく、黙ってフォークを動かしています。気がつけば、お皿の上はきれいに空になっていました。
私はその様子を見て、思わず笑いそうになりました。でも、男性に聞こえてはいけないと思い、顔を伏せてお皿を拭き続けました。
帰り際、エプロンを外していると、ママがそっと話しかけてくれました。
「ああいうお客さんがいても、ほかのお客さんが守ってくれるのよ」
ママの言葉を聞いて、あの女性たちは男性を言い負かそうとしたのではなく、自分たちの好きなケーキを素直に褒めただけなのかもしれないと思いました。
声を荒らげなくても、何気ないひと言でその場の空気は変わるのだと感じた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














