「ちょっと、どうして下げるの?」朝食会場で料理を戻した女性客。だが、若いスタッフが大皿を下げて告げた一言
トングの先から大皿に戻った料理
旅行先のホテルで朝食を取っていたときのことです。
朝食会場はバイキング形式で、料理が並ぶ台の前には客の列ができていました。
台の向こうでは、白いシャツを着た若い男性スタッフが、料理を補充したり、空いた大皿を下げたりしていました。
私も皿を持って列に並んでいました。すぐ前にいたのは、私より年上の女性客です。
その女性がトングで料理をつかんだときのことでした。
自分の皿に移そうとしたところで、隣の大皿に目を向けたのです。
「あら、こっちのほうがおいしそう」
そう言うと、つかんでいた料理を元の大皿へ戻してしまいました。
戻された料理は、ほかの料理の上に転がりました。
私は思わず目を疑いました。一度取ったものを、みんなが食べる大皿に戻すなんて……。
すると、私の後ろに並んでいた年配の女性が、困惑した声で言いました。
「えっ、それ、戻すんですか?」
「触っただけなんだから、いいでしょ」
女性客は振り向きもせずに答えました。
まったく気にしていない様子で、今度は隣の大皿へトングを伸ばそうとしています。
私は何か言おうか迷いましたが、言葉が出ませんでした。
ほかの客も使う料理なのに、そんな簡単に戻していいものなのだろうか。そう思いながら、女性客の手元を見つめていました。
大皿を下げたスタッフの一言
そのときです。
台の向こうにいた男性スタッフが手を伸ばし、女性客が料理を戻した大皿を、静かに下げました。
「ちょっと、どうして下げるの?」
女性客が不満そうに声を上げました。
スタッフは大皿を持ったまま、落ち着いた声で答えました。
「申し訳ございません。一度お取りになったものは、お皿へお願いいたします」
そして、もう一言続けました。
「ほかのお客様も召し上がるお料理ですので、こちらは新しいものにお取り替えいたします」
女性客は何も言い返しませんでした。
自分が料理を戻した大皿が下げられていくのを、黙って見つめています。
先ほどまで「いいでしょ」と言い切っていたのに、今度は口を開こうとしません。
周囲の客もその様子を見ていましたが、誰も何も言いませんでした。
スタッフはすぐに奥から新しい料理の大皿を運び、台に並べました。
女性客はトングを置くと、空の皿を持ったまま、うつむき加減で席へ戻っていきました。
すると、私の後ろにいた年配の女性が、スタッフに小さく頭を下げました。
「ありがとうございます」
スタッフはにこやかに答えました。
「お待たせいたしました。どうぞ」
私も新しく並べられた料理を皿に取りました。
女性客を必要以上に責めることなく、衛生面を考えて料理を交換したスタッフ。その落ち着いた対応に、私もほっとしました。
朝食会場でのほんの短いやり取りでしたが、スタッフの丁寧で毅然とした姿が、今でも印象に残っています。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














