「どうして夜中にあなたが送ってくるんですか?」深夜に後輩を送った僕を責める彼氏。だが、店主が明かした思わぬ事情
終電間際、居酒屋で見つけた後輩たち
10年ほど前の深夜、僕は終電に間に合うよう、駅へ急いでいました。
途中、顔なじみの店主がいる居酒屋の前を通りかかったとき、店内から聞き覚えのある声がしました。
気になって戸を開けると、カウンターには知り合いの後輩の女の子たちがいました。
かなり酔っているようで、まともに立ち上がれない様子です。
「どうしたの、こんな時間に」
僕が声をかけると、後輩のひとりが小さな声で答えました。
「お金、足りなくなっちゃって…」
店主も困った顔をしています。
「もう閉店なんだけど、帰れそうになくてね」
僕は事情を聞き、後輩たちの飲食代を代わりに払うことにしました。
そのまま帰るわけにもいかず、酔っている後輩たちを部屋まで送り届けました。
ところが、送り終えたころには終電がなくなっていました。
仕方なく僕は近くの公園へ向かい、ベンチで朝まで過ごしました。
大変な夜でしたが、後輩たちが無事に帰れたならそれでいい。
そう思っていました。
僕を責める彼氏と、店主の説明
数日後の昼、僕はあの夜のことが気になり、居酒屋を訪ねました。
「この間は大変でしたね」
僕がそう言うと、店主は申し訳なさそうに笑いました。
「本当に助かったよ。あの子たち、ちゃんと帰れた?」
「はい。ただ、終電を逃しちゃって。結局、公園で朝まで過ごしました」
「えっ、そうだったのか。悪いことしたね」
そんな話をして店を出ようとしたとき、ひとりの男性に声をかけられました。
後輩のひとりと同居している彼氏でした。彼女が夜中に男の先輩に送られて帰ってきたと聞き、事情を確かめに来たようです。
「あの夜、彼女を送ってきたのはあなたですか?」
「はい、そうですけど…」
「どうして夜中にあなたが送ってくるんですか?」
彼氏は明らかに不機嫌な様子でした。
「かなり酔っていて、一人じゃ帰れそうになかったので」
「でも、彼女からはそんな話、聞いてないんですよ。何があったんですか?」
説明しようとしても、彼氏は興奮しているようで、なかなか話が進みません。
困っていると、店先でのやり取りに気づいた店主が出てきました。
「あの、ちょっといいですか」
店主が声をかけると、彼氏は振り返りました。
「この人、彼女を送ってきたって言うんですけど」
「はい。あの日、うちに来ていたお客さんですよ」
店主は落ち着いた口調で続けました。
「あの子たち、飲みすぎて帰れなくなっていたんです。それに、お金も足りなくて」
「えっ、お金ですか?」
「そう。代金はこの人が払ってくれたんです。部屋まで送ってくれたのも、この人ですよ」
彼氏は驚いた顔で僕を見ました。
店主はさらに続けました。
「しかも、送ったあと終電を逃したそうで。さっき聞いたんだけど、公園で朝まで過ごしたんですって」
「……そうだったんですか」
彼氏の表情が変わりました。
「すみません。夜中に男の人が送ってきたって聞いて、てっきり……」
「いえ。心配になるのも分かります」
僕がそう答えると、彼氏はもう一度頭を下げました。
その場で事情を分かってもらえたことに、僕もほっとしました。
彼氏からは立て替えたお金を返したいと言われ、その夜、同じ店で受け取ることになりました。
約束どおり店に来た彼氏は、立て替えた代金よりも多い金額を差し出しました。
「これ、あのときのお金です。迷惑かけた分も入れてます」
「いや、そこまではいいですよ。払った分だけで十分です」
僕が余分なお金を返すと、彼氏は少し照れくさそうに頭を下げました。
カウンターの奥では、店主がいつものように仕込みを続けていました。
彼氏が心配した気持ちも、今なら分かります。ただ、事情を知らないまま決めつけられるのは、やはりつらいものです。
相手の話を最後まで聞くことの大切さを、改めて感じた出来事でした。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














