「鍋は浸けたから、あとは洗って」片付けたと言い張り続けた夫。翌日、妻の仕返しに夫が絶句
水に沈んだ皿9枚
その日、私は久しぶりに高熱で寝込んだ。夕方、夫が寝室のドアを開けて言った。
「今日は俺が作るよ。片付けまでやるから、寝てて」
普段から友人に「家事は分担してる」と言いふらしている人だ。
たまには甘えてもいいのかもしれない。私は素直に礼を言って、目を閉じた。
夜中、喉の渇きで目が覚めた。キッチンに立った瞬間、声が出た。
フライパンも鍋も、皿の9枚も、シンクに積まれたまま。水だけがたっぷり張ってある。
ソファでは、夫がスマホゲームに没頭していた。
「これ、片付いてないよね」
夫は画面から目を離さずに答えた。
「鍋は浸けたから、あとは洗って」
耳を疑った。
「浸けるのは片付けじゃないよ」
「浸ければ汚れは浮くだろ。俺は作る担当、洗うのはそっちの担当な」
「じゃあ、あなたが作った日は毎回、私が夜中に洗うってこと?」
「そういうことになるな。分担なんだから、しょうがないだろ」
ふらつく体で言い返す気力はなかった。私は水を飲んで、寝室に戻った。天井を見上げながら、あの言い分をそっくり返す方法だけを考えていた。
洗面器で待っていた2万円
翌日、熱は引いた。夫を送り出したあと、私は玄関の靴箱を開けた。
そこには、夫が3年前に2万円で買って以来、雨の日には絶対に履かないお気に入りのスニーカーが並んでいる。
私はそれを洗面器に沈め、水を張った。
ブラシも洗剤も出さない。
夫が休日に磨いていた白いつま先が、ゆっくり水を吸って色を変えていく。玄関の真ん中に、いちばんよく見える角度で置いた。
帰宅した夫が、扉を開けたまま動きを止めた。
「え、俺の靴…なんで水の中……」
「浸けたから、あとは洗って」
夫の口が、半開きのまま止まった。
「いや、これ、革の部分が……」
言いかけて、そのまま飲み込む。
洗面器を見て、私を見て、また洗面器を見た。
反論の言葉を探しているのが、手に取るように分かった。
「昨日のシンクと、同じことだよね」
そう告げると、夫は完全に絶句した。目を逸らし、靴下のまま玄関にしゃがみ込む。
「……悪かった。俺が洗う」
その夜、夫は洗面所で2時間、自分のスニーカーと格闘していた。乾かしても型崩れは戻らず、白かったつま先には薄いシミが残った。
翌週から、夫が夕飯を作った日は、シンクがきれいに空になっている。「浸けておいた」という報告は、あれきり一度も聞いていない。
ときどき玄関で、よれたスニーカーを見つめてため息をつく夫の背中がある。それを横目に見るたび、あの夜の洗面器を思い出して、静かに溜飲が下がるのだった。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














