「後輩のことは気になるからさ」私の行動を何度も知っていた先輩。住所も話していないのに言われた一言
何気ないひと言が、少しずつ気になり始めた
今から3年ほど前、三十代の私がいた部署には、四十代くらいの男性の先輩がいました。
仕事の相談をすれば丁寧に答えてくれる人で、昼休みに少し雑談をするくらいの距離でした。
最初に引っかかったのは、ある朝のひと言でした。
前日は残業せずに会社を出たのですが、先輩は私の席の横で足を止めました。
「昨日は遅かったんだね。22時くらいかな」
「え?昨日は残業してませんけど」
「ああ、ごめん。勘違いしたかな」
先輩はそう言って笑いました。そのときは私も、聞き間違いか何かだろうと思いました。
ところが、それから私の行動を知っているような声かけが、週に3回も4回も続くようになりました。
「今週、火曜にコンビニ寄ってたよね」
「え、なんで知ってるんですか?」
「あれ、違った?」
別の日には、「今日は昼、外に出なかったんだね」と言われました。
同じ部署なので、昼休みのことくらいは目に入っても不思議ではありません。それでも、何度も重なると少し気になります。
「先輩、よく見てますよね」
冗談っぽく返すと、先輩は柔らかく笑いました。
「そう?後輩のことは、まあ気になるからさ」
心配してくれているだけかもしれない。そう思うと、それ以上は聞けませんでした。
話していないはずの「10分」
ある日の夕方、帰り支度をしていると、先輩もコートを羽織りながら声をかけてきました。
「今日はもう帰る?」
「はい。お先に失礼します」
「気をつけてね。駅から家まで10分くらいだよね?」
一瞬、言葉が出ませんでした。
「…なんで知ってるんですか?」
「え? いや、なんとなくそれくらいかなって。違った?」
「いえ…」
最寄りの駅も、そこから家までどれくらい歩くのかも、職場の人に話した覚えはありません。しかも実際、駅から自宅までは歩いて10分ほどでした。
翌日、同期にそれとなく聞いてみました。
「私、家のことって何か話したことあったっけ?」
「え?ないと思うけど。私は知らないよ」
「だよね…」
たまたま同じ駅を使っていたのか、どこかで私を見かけたのか、それとも本当に当てずっぽうだったのか。結局、分かりませんでした。
その日から私は、帰宅するときは人通りのある明るい道を選び、ときどき遠回りするようになりました。
やがて私の部署異動が決まり、先輩とは席も仕事も離れました。最後の日、先輩はいつもと変わらない表情で手を振りました。
「向こうでも無理しないでね」
「はい。今までありがとうございました」
先輩は「じゃあね」と言うと、すぐに机の書類へ目を戻しました。
あの「10分」をどうして知っていたのかは、今も分かりません。ただ、説明できない違和感を覚えたときは、自分が安心できる行動を取っておくことも大切なのだと思った出来事です。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














