「旦那ちゃんの好みはこの味噌汁よ」味付けまで指定する義母に、夫が妻の味が一番だと返した一言
訪ねるたびに、台所で受ける「正解」の指導
夫の実家へ泊まりに行くと、決まって私はキッチンに立たされる。義母は料理の名人で、出汁の引き方から下ごしらえの手順まで、その味には本当に頭が下がる。教わることも多く、ありがたいとは思っている。けれど、そのぶん我が家の食卓にまで細かく口を出されることには、少しずつ疲れがたまっていた。
その夜も、味噌汁を作る私の後ろから、義母が味見のスプーンを手に声をかけてきた。
「旦那ちゃんの好みはこの味噌汁よ」
私がふだん作る少し薄めの味を、義母はやんわりと否定する。
「あの子は濃いめが好きなの。味噌は、もう少し足してあげてね」
夫の好みを、私より義母のほうがよく知っている。そう言われている気がして、返す言葉に詰まった。でも、それが嫁いびりではないことも、ちゃんと分かっている。
「はい、覚えておきますね」
私は角を立てないよう、笑顔でうなずくのだった。家に帰って夫にこぼしても、いつも「おふくろ直伝ってことでしょ」と的外れに流されるだけ。だから今夜も、飲み込むしかないと思っていた。
いつも流していた夫が、その夜だけは
そのとき、リビングにいた夫が台所をのぞきに来た。私の味付けを直そうとする義母の声が、聞こえていたらしい。また「習えて良かったね」で終わるのだろうと、私は小さく息をついた。ところが夫は、義母の隣に立ってやわらかく言った。
「母さん、僕は妻の作る味噌汁が一番好きなんだよ。うちはこの味でいいんだ」
穏やかで、けれど揺るがない声だった。いつも私の相談を軽く受け流していた夫の口から、そんな言葉が出るなんて思ってもみなかった。義母は一瞬きょとんとしてから、ふっと表情をゆるめた。
「あら、そう。……なら、いいのよ。あなたがそう言うなら、それが一番」
気を悪くするでもなく、義母は品よく引いてくれた。すべては息子を思っての親心で、悪気などなかったのだ。角が立たずに収まったことに、私は心からほっとした。
その夜の味噌汁を、夫は「うん、やっぱりこの味だ」と笑って飲み干した。義母も隣で穏やかに頷いている。ずっと胸の奥に押し込めてきた「うちにはうちの味がある」というひと言を、夫が代わりに口にしてくれた夜。誰にも言えなかった小さなストレスが、すっと軽くなっていくのを感じた。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














