「ありゃりゃ、ぐっすりだ」深夜のコンビニで寝込んだ男性。店員の一言で呼ばれた家族
夜勤明けに立ち寄ったコンビニで
夜勤のある週は、帰りに近所のコンビニへ寄って、軽い食事を買うのが習慣になっている。
深夜の店内はたいてい静かで、レジにいるのは年配の男性店員さんが一人。いつもゆっくりした口調で、商品を袋に入れる手つきまでおだやかな人だった。
その夜も、私はサンドイッチとお茶を持ってレジへ向かった。
店員さんが商品を読み取っていると、五十代くらいの男性がふらりと入ってきた。ネクタイはゆるみ、歩くたびに体が少し揺れている。
男性はレジの近くまで来ると、カウンターに手をついた。
「お客さん、大丈夫ですか?」
店員さんが声をかけると、男性はゆっくり顔を上げた。
「大丈夫、大丈夫……ちょっと飲みすぎただけです」
そう答えたものの、立っているのもつらそうだった。
「無理しないほうがいいですよ」
店員さんが心配そうに言うと、男性はレジ脇の壁にもたれるようにしてしゃがみ込んだ。
「すみません。ちょっとだけ休ませてください」
「いいですけど、そこで寝ちゃわないでくださいね」
ところが数分もしないうちに、男性は座ったまま目を閉じてしまった。
「お客さん。寝ちゃいました?」
店員さんが声をかけると、男性は「んー……」と小さく返しただけだった。
店員さんは困ったように男性を見下ろした。
「ありゃりゃ、ぐっすりだ」
あまりに穏やかな声だったので、そばで見ていた私も少しだけ緊張がゆるんだ。
「一人で帰れそうですか?」
しばらくして、店員さんはもう一度男性のそばへ行った。
「お客さん、起きられますか?」
今度は少し大きめの声だった。
男性は眉を動かし、ゆっくり目を開けた。
「……あれ。俺、寝てました?」
「だいぶしっかり寝てましたよ。一人で帰れそうですか?」
男性は床に座ったまま少し考えたあと、苦笑いをした。
「いや……ちょっと無理かもしれないです」
「それなら、ご家族に迎えを頼めませんか?」
「そうですね。家内に電話します」
男性はポケットから携帯電話を取り出した。
電話では最初に「ごめん」と謝り、それから店の場所を伝えていた。
迎えに来た奥さん
しばらくすると、店の前に一台の車が止まった。
入ってきた女性は男性を見つけるなり、驚いた顔で近づいてきた。
「ちょっと、何してるの? 電話が来たから何事かと思ったじゃない」
「ごめん。飲みすぎたみたいで……」
「みたいじゃないでしょ。もう……」
あきれた口調だったが、男性の顔をのぞき込む表情は心配そうだった。
それから奥さんは店員さんへ向き直り、深く頭を下げた。
「本当にすみません。ご迷惑をおかけしました」
「いえいえ。迎えに来てもらえてよかったですよ」
男性も立ち上がりながら、申し訳なさそうに頭を下げた。
「すみませんでした」
「ほら、ゆっくりでいいから」
奥さんは男性の腕を支えながら、二人で店を出ていった。
車が走り去ると、店員さんは小さく息を吐いた。
「いやあ、びっくりしましたね」
「私もです。急に座り込んだときはどうなるかと思いました」
「無事に帰れてよかったですよ」
そう言って店員さんは途中になっていた私の会計へ戻り、サンドイッチとお茶を袋へ入れた。
「お待たせしました」
その表情は、もういつもの穏やかな店員さんに戻っていた。
深夜のコンビニで男性が寝込んだことにも驚いたけれど、それ以上に、「ありゃりゃ、ぐっすりだ」と困ったようにつぶやいた店員さんの声が、その夜は妙に耳に残った。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














