「使ってないよ。責任者を呼べ」と開封済みのインクを返品したい客。店長の穏やかな問いで、言い分が食い違った理由
開封済みのインクを持ち込んだ客
前日に買ったインクを、男性が開封したまま返品に来ました
十年ほど前、私は家電量販店でアルバイトをしていました。
土曜日の昼過ぎ、店内は大勢のお客様で混み合っていました。
レジに立っていると、五十代くらいの男性がやってきました。手にはプリンター用のインクの箱とレシート。
購入日は前日です。男性は箱を置くと、いら立った様子で言いました。
「これ、使えなかったから返品して。」
箱は開封済みでした。カートリッジの保護テープは剥がされ、プリンターに取り付ける部分には装着した跡が残っています。私は店の決まりを思い出しながら尋ねました。
「一度、取り付けられましたか?」
男性は使っていないと言い張り、声が大きくなりました
男性は首を横に振りました。
「使ってないよ。箱を開けただけだ。」
けれど、カートリッジに残った跡は、箱を開けただけで付くものではありません。私は頭を下げて伝えました。
「返品は、お受けできない決まりです。」
すると男性の声が大きくなりました。
「使ってないよ。責任者を呼べ。」
周りのお客様の視線が集まる中、気づいた店長がカウンターまで来てくれました。
店長が確かめた箱の状態
店長が穏やかに尋ねると、男性の説明が変わりました
店長は男性の話を遮らずに聞き、箱を手に取って状態を確かめました。そして穏やかな声で尋ねます。
「つけたら、認識されなかったのですか?」
男性は少し間を置いてから答えました。
「一度つけたけど、うまく使えなかったんだ。」
ついさっきまで「箱を開けただけ」と言っていた男性が、ここで一度取り付けたことを認めました。店長は説明の食い違いを責めることなく、カートリッジの接続部分を指しながら静かに言いました。
「保護テープが外され、一度取り付けられた状態です。お客様のご都合による返品は、お受けできません。」
男性は不満そうに眉を寄せました。
「でも、使えなかったなら不良品じゃないのか。」
型番を調べると対応しない種類で、男性は引き下がりました
店長は返品を断るだけでなく、インクが使えなかった原因についても確認しようとしました。そして、購入したインクが男性のプリンターに対応しているか調べると案内しました。
対応機種の一覧を確認したところ、男性のプリンターは購入したインクの対応機種に含まれていませんでした。売り場で似たパッケージを取り違えたのかもしれません。
店長は対応機種の一覧を見せながら、落ち着いて告げました。
「お使いの機種に、対応しない種類でした。」
店長はさらに、一度取り付けた商品は再販売できないため返品が難しいことや、次回は購入前にプリンターの型番を伝えてもらえれば、対応するインクを案内できることを説明しました。
男性は箱と一覧を見比べ、小さな声で言いました。
「そういうことなら仕方ないな。」
帰り際、店長が合うインクの型番をメモにして渡すと、男性は黙って受け取り、店を出ていきました。
店長は男性の話を最初から決めつけず、商品の状態を確認し、インクが使えなかった原因まで調べていました。返品できない理由を伝えるだけでなく、次に間違えないための案内も添える。その姿を見て、接客では相手が納得できるように説明することも大切だと感じました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた30代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














