「うちは大人になっても、毎年こうなのよ」婚約者の祖母から渡されたのし袋。帰り道、中身を見た私は思わず固まった
付き添いのつもりで向かった、お正月のあいさつ
婚約していたころの話です。
婚約者の家は代々会社を営んでいて、会長を務めていたのは彼のおばあさまでした。
結婚を控えた年のお正月、私も婚約者と一緒に、おばあさまへ新年のあいさつにうかがうことになりました。
事前に彼から聞いていたのですが、お正月におばあさまからお年玉をもらうのが、家の習慣なのだそうです。
「えっ、今でもお年玉もらってるの?」
「うん。毎年もらってるよ」
彼は20代後半の社会人です。大人になってもお年玉をもらっていると聞いて、少し驚きました。
「なんかすごいね」
「まあ、顔を見せに行く口実みたいなものだよ」
私はその言葉から、ちょっとしたお小遣いを受け取る程度なのだろうと思っていました。
そもそも私は付き添いです。自分までお年玉をもらうことになるとは、まったく考えていませんでした。
当日は失礼のないようにと、手みやげを用意し、手持ちの中でいちばんきちんとした服を選びました。
「そんなに緊張しなくていいって。ばあちゃん、話すの好きだから」
「そう言われても、やっぱり緊張するよ」
彼は笑っていましたが、私はきちんとあいさつできるだろうかと、少し落ち着かない気持ちでした。
おばあさまから差し出された、思いがけないのし袋
元日の朝、通された座敷には立派な床の間があり、その前に着物姿のおばあさまが座っていました。
背すじはまっすぐで、声にもしっかりと張りがあります。
私とスーツ姿の婚約者は、その前に並んで手をつきました。
「あけましておめでとうございます。本年もよろしくお願いいたします」
おばあさまはにこやかにうなずくと、のし袋を二つ取り出しました。
一つを婚約者に渡し、もう一つを私のほうへ差し出したのです。
「えっ、私にもですか?」
「もちろん。はい、どうぞ」
思いがけないことで、私は驚きながら両手で受け取りました。
「ありがとうございます。でも、私までいただいてしまって……」
「いいのよ。うちは大人になっても、毎年こうなのよ」
おばあさまは、当たり前のことのように笑っていました。
隣を見ると、婚約者は慣れた様子で自分ののし袋を上着の内ポケットにしまっています。
私も受け取ったのし袋を手元に置こうとしましたが、思っていた以上に厚みがあることに気づきました。
しかも、ずっしりとした重さがあります。
いったい、いくら入っているのだろう。
もちろん、その場で中身を確認するわけにもいきません。私は気になりながらも、あらためてお礼を伝えました。
朝のうちにあいさつを済ませた帰り道、私はそっとのし袋の中をのぞいてみました。
そして、中身を見た瞬間、思わず足が止まりました。
想像していたより、ずっと大きな額のお年玉が入っていたのです。
「ねえ、ちょっと待って。こんなに入ってるんだけど…」
「うん。いつもそんな感じだよ」
「いや、先に言ってよ。びっくりしたよ」
婚約者は、私の反応がおかしかったのか、笑っていました。
彼にとっては毎年のことでも、私には驚くばかりです。
「これ、本当にいただいてよかったのかな?」
「ばあちゃんがくれたんだから、大丈夫だよ」
そう言われても、やはり落ち着きません。
ありがたい気持ちはもちろんありましたが、思いがけない額だっただけに、その日は一日じゅうそわそわしていました。
そして翌年のお正月が近づいたころ、私は便せんを買い、おばあさまへのお礼の手紙を書きました。
「去年はびっくりしちゃったから。今年は会ったら、先にこれを渡そうと思って」
そう言うと、彼は手紙をのぞきこんで笑いました。
「ばあちゃん、喜ぶと思うよ。額に入れて飾っちゃうかも」
「そこまでしなくていいけどね」
私も思わず笑ってしまいました。
あのお年玉には本当に驚きましたが、それ以上に、まだ結婚前だった私まで温かく迎えてくれたことがうれしかったのです。
今度は驚くだけでなく、きちんと感謝の気持ちを伝えたいと思いました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた40代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














