「うちは子どもが腹空かせてるんだよ」回転寿司の受付を素通りした父親。だが、息子が告げた思いがけない一言
受付の機械を素通りした父親
数年前の休日、私は家族と回転寿司店に行きました。
ちょうど昼時で、入口の待合スペースは子ども連れの家族でいっぱい。
いすもほとんど埋まり、受付の機械で番号の紙を取った人たちが順番を待っていました。
私たちが番号の紙を取ると、前には4組ほどいました。
娘と一緒に待っていると、父親と小学生くらいの男の子が店に入ってきました。
ところが、父親は受付の機械を素通りしました。そして、奥の空いた席に目を留めると、手を挙げて若い女性店員を呼んだのです。
「ちょっと、あそこ空いてるよね。座っていい?」
「申し訳ございません。順番にご案内しておりますので」
店員が答えると、父親はため息をつきました。
「うちは子どもが腹空かせてるんだよ」
「待ってる人がいるのは分かるけどさ。子ども連れなんだから、そこは融通きかせてよ」
待っているのも、私たちを含めて子ども連れの家族ばかりです。店員がもう一度説明しても、父親は腕を組んだまま動こうとしませんでした。
父親を止めたのは、隣にいた男の子
そのとき、待合の奥にいた女性客が、ため息交じりにつぶやきました。
「みんな待ってるんですけどね」
父親はそちらを振り向き、女性をにらみました。店員はまた頭を下げます。私も何か言いたくなりましたが、周囲の子どもたちの前で言い争いになるのは避けたくて、黙っていました。
すると、父親の隣にいた男の子が、父親の手をぎゅっと引きました。
「パパ、あの機械で番号の紙を取らないとだめなんだよ。みんな、紙を持って待ってるよ」
男の子は受付の機械を指さし、続けて言いました。
「ぼく、ちゃんと待てるよ」
父親は言葉に詰まった様子でした。お腹を空かせていると言われていた男の子自身が、きちんと待つと言ったのです。近くで聞いていた人たちも、小さくうなずいていました。
店員は男の子に笑顔を向けました。
「そうだね、ありがとう」
父親は顔を赤くし、何か言いかけましたが、そのまま口を閉じました。
男の子は父親の手を引いて受付の機械へ向かい、背伸びをしてボタンを押しました。出てきた番号の紙を受け取ると、待合のいすに座って両手で大切そうに持っています。父親も隣に座り、私が見ている間は黙ったままでした。
その様子を見ていた娘が、私の袖を引いて小声で言いました。
「あの子、えらいね」
私はうなずきました。先ほど父親が座りたがっていた席には、番号を呼ばれた別の家族が案内されていきました。
男の子が口にした「ちゃんと待てるよ」という一言が、父親も順番を守るきっかけになったのだと思います。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた50代女性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














