「注意書きなんか見えない」料理の量に怒り、店長を呼んだ男性客。写真の横に書かれた「大盛り」の文字に黙り込んだ瞬間
決まりどおりに盛りつけた料理
飲食店のキッチンでアルバイトをしていたころの出来事です。
その店では、ご飯もおかずも盛りつけの量が細かく決められていて、私たちはマニュアルどおりに料理を仕上げていました。
その夜も、テーブル席の男性客から注文された料理を、いつもどおりに盛りつけました。
ところが、ホール担当の女性が料理を運んでしばらくすると、客席のほうから大きな声が聞こえてきたのです。
「おい、ちょっと。これ、少なくないか?」
キッチンの出入口から様子をうかがうと、男性が皿の横にメニューを広げ、料理と写真を見比べていました。
「ほら、写真だとこんなに山盛りじゃないか。これじゃ全然足りないだろ」
女性は困った表情でメニューを指さし、説明を始めました。
「申し訳ありません。こちらに、写真と異なる場合があると書いてありまして。それと、写真の横に……」
しかし、男性は最後まで聞こうとしません。
「注意書きなんか見えない」
そう言ってメニューを指ではじくと、さらに声を荒らげました。
「こっちは損してるんだよ。盛り直すとか値引きするとか、何かあるだろ。店長を呼んでよ」
女性が説明しようとしても、男性は納得する様子がありません。
私も、決められた量で作った料理をここまで責められるとは思わず、悔しい気持ちになりました。
店長が指さした写真の横の文字
周囲のテーブルでも会話が途切れ、店内には気まずい空気が流れていました。
「僕が行くよ」
店長はエプロンを直すと、男性のテーブルへ向かいました。
私はキッチンの出入口付近から、やり取りを見守っていました。
店長は男性の言い分を最後まで聞くと、テーブルの上にあったメニューを開きました。
そして、料理の写真のすぐ横にある小さな文字を指さしたのです。
「こちらの写真は大盛りなんです。お客様がご注文されたのは並盛りですね」
その言葉を聞いた男性は、ぴたりと黙りました。
改めてメニューに目を落とし、写真の横に書かれた「大盛り」の文字を見つめています。
店長は落ち着いた口調で続けました。
「お料理は、並盛りの決められた量でお作りしています。もし大盛りをご希望でしたら、今から変更できるか確認いたしますが……」
しかし、男性から返事はありませんでした。
少し離れた席では、ほかの客が顔を見合わせ、笑いをこらえているようにも見えました。
男性はそれ以上何も言わず、メニューを閉じました。そして黙って箸を取り、うつむいたまま料理を食べはじめたのです。
やがてキッチンに戻ってきた店長は、出入口にいた私の肩を軽くたたき、小さくうなずきました。
「いつもどおりで大丈夫だよ」
その一言を聞いて、ようやくほっとしました。
写真を見て注文した料理が想像より少なければ、不満に思うこともあるでしょう。
ただ、説明を最後まで聞いてもらえないと、こちらもどう対応すればよいのか分からなくなってしまいます。
店長が感情的にならず、メニューに書かれた事実を落ち着いて伝えてくれたことが、何よりありがたく感じられました。
次の注文が入り、私は再びコンロの前に戻りました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














