「うちの教育方針なんで」危険を指摘した私を追い払った父親。だが、公園のスタッフが指さした場所にあったもの
車道のすぐ手前まで走る男の子
昼休みに、車道沿いの公園のベンチで缶コーヒーを飲んでいたときのことです。
広場の先には柵のない出入口があり、その向こうは車が行き交う道路になっていました。
広場では、父親と小学校低学年くらいの男の子が、自転車の練習をしていました。
補助輪のない自転車に乗った男の子は、何度もふらつきながら、それでも少しずつペダルをこげるようになっていきます。
最初は微笑ましく見ていたのですが、次第に気になることが出てきました。
男の子はヘルメットをかぶっていません。
地面はかたいコンクリートです。しかも、うまくこげるようになるにつれ、車道につながる出入口へ向かって走るようになったのです。
「パパ、見てて!」
男の子は勢いよくペダルをこぎ、道路に出るぎりぎりのところで足をついて止まりました。
父親は少し離れた場所で腕を組み、うなずいています。
また男の子が出入口へ向かったとき、ちょうど道路を車が通り過ぎました。
もし止まりきれなかったら…。そう考えると、見ているだけでも怖くなりました。
私は思わず立ち上がり、父親に声をかけました。
「あの、すみません。すぐそこが道路なので、ちょっと危なくないですか?」
父親はこちらをちらりと見ました。
「大丈夫ですよ。ちゃんと自分で止まれてますから」
「でも、ヘルメットもしていないですし…」
すると父親は、面倒そうに顔をしかめました。
「いや、うちの教育方針なんで。関係ない人は口出ししないでもらえます?」
思いがけず強い口調で返され、私は言葉に詰まりました。
近くのベンチにいた人たちもこちらを見ています。これ以上言い合いになるのも嫌で、私は自分のベンチへ戻りました。
スタッフが指さした出入口の看板
それから少しして、管理事務所の作業着を着た年配のスタッフが、見回りで広場に入ってきました。
ちょうど男の子が、また出入口へ向かって自転車をこいでいるところでした。
スタッフはその様子を見ると足を速め、父親に声をかけました。
「すみません、お父さん。ちょっとよろしいですか」
「なんですか?今、練習してるんですけど」
父親は少し不満そうです。
スタッフは落ち着いた声で伝えました。
「園内は自転車の乗り入れが禁止です」
「えっ?」
「それに、あそこはすぐ車道です。もしお子さんが止まりきれなかったら、そのまま道路に出てしまいますよ」
そう言って、スタッフは出入口のほうを指さしました。
そこには、自転車の絵に大きなバツがついた看板が立っていました。
父親は看板に目を向け、何か言いかけましたが、結局何も言いませんでした。
男の子も自転車を止め、父親のそばに来ていました。
スタッフは今度は男の子に向かって、少し表情をやわらげました。
「上手にこげてたね。でも、次はヘルメットをかぶって、自転車の練習ができる場所でやろうね」
男の子は小さくうなずきました。
父親は黙って自転車のハンドルを握り、男の子と並んで出入口へ向かいました。
さっきまで勢いよく走っていた自転車を、今度はゆっくり押して公園を出ていきます。
近くのベンチにいた人たちも、その様子を静かに見ていました。
私はようやく肩の力を抜き、残っていた缶コーヒーを口にしました。
男の子が楽しそうに練習していた姿を思い出すと、練習そのものを否定したいわけではなかったのです。
ただ、あの出入口のすぐ先には車道があります。何も起きないうちに止めてもらえて、本当によかったと思いました。
※本記事は、tendが独自に実施したアンケートで寄せられた20代男性読者の体験談をもとに、プライバシーに配慮し、人物・状況・会話表現などを一部編集・再構成して記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














