「8千円は、自分で払いなさい」自転車には乗らないと言い張るヨガ教室の古株。仲間が向けた冷たい目
教室が終わった体操室の前
倒れた自転車の話に、古株の女性は自転車に乗らないと言いました
「私は自転車に乗らないの。」
ヨガ教室が終わったあとの、市民センターの体操室前の廊下でした。ベンチの端に座った古株の女性が、真っ先に答えたのです。
私はベンチに座る2人に、『裏の駐輪場で、私の自転車が倒れて、前のかごが曲がっていました。直すのに8千円かかります。だれか、見ませんでしたか』と尋ねたところでした。
自転車が倒れていたのは、先週の教室が終わった直後のことです。
近くの自転車店で見てもらうと、かごと取り付け金具の交換に約8千円かかると言われました。
倒れていた私の自転車の隣には、停めたときにはなかった銀色の自転車がありました。
念のため撮影した写真にも、その自転車が写っています。
停め方が悪いんじゃないの、と古株の女性は続けます。
きょうも家から歩いて来たと、古株の女性はあごを上げました
その女性はこの教室に10年通い、前列の場所取りを仕切っている人です。
「きょうも、家から歩いて来たわ。」
「うちは、だれも自転車は乗らない。」
タオルで額の汗をふきながら、女性はあごを上げました。
新入りは端に停めるもの、8千円は私が払えと言われました
「新入りは、端に停めるものよ。」
「8千円は、自分で払いなさい。」
ベンチの奥に座るもう一人の女性が、丸めたマットを膝にのせたまま、私を見ました。
駐輪場は建物の裏で、体操室からは見えず、防犯カメラもありません。この時間に開かれている教室はここだけで、先生もすでに帰っています。
10年も通う古株に逆らえば、来週から気まずくなるかもしれません。私には事故の瞬間を見た記憶もなく、言い返せる材料がありませんでした。
「来週から、いちばん後ろ」
古株の女性は立ち上がり、来週から私はいちばん後ろだと言いました
古株の女性がマットを脇に抱えて立ち上がり、私の前へ出てきました。
「来週から、いちばん後ろ。」
「そこが、新入りの場所。」
本来、教室の立ち位置に決められた序列などありません。それでも、胸を張った女性の声が廊下に響きます。
古株の女性の手提げに、自転車のヘルメットが下がっていました
女性が立ったあと、ベンチの端に、大きな布の手提げが見えました。座っていた女性の体の陰で、さっきまで見えなかった場所です。
「歩いて来たのに、そのヘルメット。」
私は、手提げに手のひらを向けました。持ち手に、白いヘルメットがあごひもで掛けてありました。通気の穴が並んだ、自転車に乗るときのヘルメットです。
女性の目が、手提げの上で止まりました。
8千円を払うと約束し、来週から自分が後ろだと古株の女性は言いました
「自転車で来たって、倒したのは別の人!」
「私よりあとは、あなただけです。」
先週、私は教室が始まる直前に自転車を停めました。私が入室したあと、遅れて教室に入ってきたのは、この古株の女性だけでした。
もちろん、それだけで自転車を倒したと決めつけることはできません。
ただ、今日も駐輪場には、先週撮影した写真と同じ特徴の銀色の自転車が停まっていました。後輪の泥よけに貼られた赤い反射テープまで一致しています。
私がスマートフォンで写真を見せると、ベンチにいたもう一人の女性が顔を上げました。
その女性は先週、忘れ物を取りに廊下へ戻った際、裏口のガラス越しに、古株の女性が銀色の自転車を押している姿を見ていたそうです。そのとき、ハンドルが私の自転車の前かごに当たったところも目にしていました。
ただ、自転車が倒れるところまでは見ておらず、修理が必要なほどの出来事だとは思わなかったとのことでした。
その話を聞いた古株の女性は、何か言いかけて口を閉じました。
もう一人の女性は、膝のマットに手を置いたまま、冷たい目で古株の女性を見ていました。
しばらく黙っていた古株の女性は、『急いでて、ハンドルが当たったの。ヘルメットも、しまう間がなくて』と認めました。そして、『8千円は、払います。ごめんなさい。来週から、私がいちばん後ろに』と続けたのです。
私は、修理代については見積書を渡して確認してもらうことにしました。
古株の女性は、自分のマットを抱え直すと、うつむいたまま廊下を歩いていきました。
来週から後ろに立つ必要があるかどうかは別として、もう私に場所を指定するようなことはないでしょう。
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














