「言ってあげたほうが優しさなのか、余計なお世話なのか——。」
これは、私が本当に悩んだ末に“黙っていた”ことで起きた、ちょっと苦い話。
はじまりは職場の新人歓迎会だった
春、うちのチームに新しく加わったAさん(27歳・女性)は、清楚系の見た目とほんわかした性格で、誰からも好かれるタイプだった。
「気配りができて、空気も読めるし、Aさん来てくれて良かったね」なんて、みんなで話していたある日のこと。
歓迎会の終盤、Aさんが席を立った瞬間、周りの空気が一変した。
──「…ちょっと、におわない?」
小声で隣の同僚が耳打ちしてきた。
正直、私も最初は気のせいかと思っていた。
でも確かに、距離が近くなるとわかる。強めの体臭、いわゆる“ワキガ”のにおいだった。
“言うべきか”迷ったまま、黙っていた私
私は人にズバッと物を言えるタイプじゃないし、体のことを指摘するのは本当にデリケートな問題だと思っていた。
「誰かが言ってあげた方が、本人のためかも」
「でも傷つけたらどうするの?」
頭の中を何度もぐるぐる回るこの思考。
結局私は、「言わない」という選択をした。
ある日突然、Aさんが孤立し始めた
それから数週間。
Aさんに対して、周りの態度がなんとなくよそよそしくなっていった。
・会話が必要最低限
・ランチの誘いに誰も乗らない
・デスクにファブリーズを置く人まで…
陰で「無理かも」「ちょっとキツイよね…」という声が飛び交いはじめた。
Aさんは少しずつ元気がなくなり、会話も減り、ついには体調不良で休みがちに。
そして衝撃の結末:「誰も教えてくれなかったんですね…」
後日、Aさんは退職届を出した。
理由は「体調不良」だったけれど、親しかった先輩がこっそり聞いた話によると——
「ずっと悩んでたけど、自分では気づけなくて。
後になって、においのことを言われて…。
誰も教えてくれなかったのが一番ショックでした。」
その言葉に、胸がズキッと痛んだ。
私はあのとき、Aさんと一番距離が近かった存在だったのに。
言えなかった。伝えなかった。その“優しさ”が、結果的には彼女を孤独に追いやった。
「伝える」って、難しい。でも…
この出来事があってから、人に何かを伝えるときの“覚悟”について考えるようになった。
体のこと、においのこと、外見のこと——
すべてが“言わないほうが優しさ”とは限らない。
伝え方を間違えればトラブルになる。
でも、正しい距離感と信頼関係があれば、「伝える優しさ」も確かにあるのだと思う。
【まとめ】ワキガを“指摘するか迷ったとき”に考えてほしいこと
・まず本人は気づいていない可能性が高い
・デリケートな問題なので、伝えるなら一対一で、やさしく
・言うなら「自分も体臭で悩んでいた」など共感ベースの導入を
・無理に自分が言わず、信頼できる第三者に相談するのも一つの手
「本当の優しさって何だろう?」
——それを改めて考えさせられた、ちょっと苦くて忘れられない体験談でした。