「先輩を連れてくるから」遠距離の彼との待ち合わせに現れた年の離れた男。20年後、思わぬ形で再会した
改札の前に並んだ二人、片方だけが明らかに浮いていた
10代後半だった頃、隣県に住む同年代の彼と遠距離で付き合っていました。
会えるのは月に一度ほどでしたが、当時の私には十分でした。
ある日、彼から弾んだ声でメッセージが届いたのです。
「友達と一緒に四人で会わないか」。
私はすぐに仲のよい友人に声をかけ、待ち合わせの駅へ向かいました。
「先輩を連れてくるから」
その一言が前日に届いていたのは覚えています。
けれど、改札を抜けて彼の姿を確認した瞬間、私の頭は真っ白になりました。
彼の隣にいたのは、明らかに一回り以上年上の男性だったのです。
腹の出た体つき、薄くなった髪、深い目尻のしわ。学生の自分たちとは住む世界が違う雰囲気でした。
友人の手が私の腕をつかむのを感じました。
けれど引き返す勇気もなく、彼に手を振ることしかできなかったのです。
彼は何の屈託もなく、その先輩を私たちに紹介しました。
あくまで朗らかな声色で、悪意のかけらも見えなかった。それがいっそう怖かったのです。
食事の席で、私は彼の感覚にじわじわと幻滅していきました。
友人を年齢のかけ離れた相手にあてがう発想を、彼は不思議に思っていない様子だったのです。
次に会う約束を取りつける気には、もうなれませんでした。
調査の仕事中に流れてきた一行
20年以上の歳月が流れました。
私は調査関係の仕事に就いていて、依頼に応じて個人情報を整理する立場で働いていたのです。
ある朝、新しい対象者のリストを開いた瞬間、私は手元のマグカップを置く動作を止めました。
並んでいた氏名と生年月日に、強烈な既視感があったのです。
共通の知人を介して別れたきり、20年以上連絡をしていなかったあの彼でした。
同姓同名の偶然を疑い、紐づいた情報をひとつずつ確認していきました。
学歴・出身地・最終勤務先。すべて、彼の口から聞いたことのある内容と一致したのです。
(本人だ)
住所欄に印字されていたのは、付き合っていた頃に何度も話題に出ていた実家の地名でした。
婚姻歴の項目は空欄のまま。同居家族には、ご両親の名前。50代を間近にした彼は、20年経っても同じ場所に立っていたのです。
仕事ですから、感情を入れずにデータを整える作業を続けました。
けれど画面を閉じたあと、肩のあたりに重たい寒気が残っていたのを覚えています。
あの日のダブルデートで、もし違和感を呑み込んで関係を続けていたら。
中年男性を平気で連れてくる感覚の人と、私は何年一緒にいたのだろう。考えるほどに、コーヒーを淹れ直しても指先の冷たさが取れなかったのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














