「結婚祝いのつもりで掃除しといた」留守中に合鍵で家に上がった義母。帰宅した私が見た光景に思わず絶句
玄関のスリッパが、出かけた朝と並びが違っていた
義実家での集まりから新居に帰り着いたのは、夜の七時すぎでした。
玄関のドアを開けてまず目に飛び込んできたのは、スリッパの並びです。
出かける前、私は来客用の白いスリッパを靴箱の中にしまい、自分たちの分だけを玄関に出しておきました。
それが帰宅したときには、来客用が二足、玄関に揃えて出されていたのです。
夫に小声で確かめます。
「これ、出して行ったっけ?」
夫もさすがに表情を曇らせ、首を横に振りました。
リビングへ進むと、ソファのクッションは妙にきちんと並び、テーブルの上のティッシュ箱も、私が置いた位置から少しだけ向きが変わっている。寝室を覗くと、ベッドカバーが朝出かけたときよりピンと張られていました。
洗面所のタオルは、出かける前にざっくりかけていたはずなのに、四つ折りに整えて掛け直されている。
キッチンのシンクの中も、すべての食器が水切りカゴに伏せて並べ直されていました。
家中の空気そのものが、誰かの手で軽く整え直されている感じがして、私はその場でしばらく動けなくなったのです。
夫の電話越しに聞こえてきた義母のあっけらかんとした声
夫が義母に確認の電話を入れてくれました。スピーカーから流れてきた声は、私の予想を裏切る、とても明るいものだったのです。
「結婚祝いのつもりで掃除しといたわよ」
義母は、合鍵を使って昼下がりに新居に上がり、リビングに掃除機をかけ、寝室のベッドメイキングを直し、冷蔵庫を開けて中身を入れ替えてくれていたのでした。
義母にとっては、新婚の嫁夫婦への精いっぱいの善意です。
けれど、聞かされている側の私は、息が浅くなっていくのを感じました。
私の留守中に、私のいない家のリビングを、寝室を、義母が当然のように歩き回っていた。
クローゼットの中も覗いただろうか。引き出しは開けただろうか。考え出すときりがなく、その事実が、ぞわっと背中の真ん中を冷やしていくのです。義母のなかでは、合鍵を渡された嫁の家は、もう少しだけ自分の家でもあるのかもしれない。そう気づいてしまったことが、いちばん怖かったのでした。
電話を切った夫が、こちらを見て深く息を吐きました。
「合鍵、返してもらおう」
夫が自分から切り出してくれたことに、ようやく胸の奥がほどけていきます。
翌週、義実家で合鍵を受け取り、緊急時は必ず事前連絡を入れる、という取り決めを夫婦で義母に伝えました。義母は最後まで腑に落ちない顔をしていたけれど、私たちにとっては、玄関の鍵をようやく取り戻した夜だったのです。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














