「お金が合わない」職場の休憩室の料金箱のお金が合わない。だが、犯人が自白した結果
料金が合わない日々が続いた
職場の休憩室に設けられたコーヒーコーナーは、カプセルや軽食を手頃な値段で使える福利厚生の一環だ。
料金は専用箱への自己申告制で、長年社員に親しまれてきた。
異変に気づいたのは、総務が毎月の集計をするようになってからだ。
「お金が合わない」
金額が微妙に合わない月が続き、担当者の顔色が曇るのをよく見かけるようになった。
最初は「誰かが計算を間違えたのでは」と思っていたが、不一致が何度も続くとそうも言っていられない。
まもなく、コーナーの常連利用者に個別に確認が入った。私もその一人で、「使った分はきちんと入れています」と答えたが、疑われている感覚は消えなかった。
私たちを「怪しい」と囁いていたのは
しばらくの間、職場には微妙な緊張感が漂っていた。利用者同士で目が合うとどこか気まずく、コーヒーコーナー自体を避けるようになった人もいた。
そのころ、ある同僚がさりげなく話しているのを耳にした。
「あの人たち怪しくない?」
私もその「よく使う人」に含まれていることは、容易に想像できた。
調査が進み、ある日、管理職から関係者が呼ばれた。
「本人から申告がありました」
名指しされたのは、他でもない、囁いていた本人だった。
「私が持って帰っていました」
肩を震わせながら絞り出した声に、誰も言葉を返せなかった。家計が苦しくてつい手が出た、という事情が語られたが、私の胸にあったのは同情よりも先に、長く続いた理不尽さへの怒りだった。他人を疑いの目で見ながら、自分がやっていた。その矛盾が、どうしても頭を離れなかった。
疑惑が晴れた朝の、静かな解放感
その同僚は数日後に退職した。
翌朝、休憩室のコーヒーコーナーに立ち寄ると、空気が変わっていた。
疑われていた同僚数人と目が合うと、全員が無言でうなずき合った。言葉にしなくても、晴れた気持ちは伝わった。
久しぶりにカプセルをセットしながら、「やっと終わった」と静かに思った。
疑われていた日々は、ほんの数週間だったかもしれない。でも、心が消耗した量は、それ以上だったように感じた。
理不尽な疑いをかけられたとき、黙っていることが誠実さの証明にはならないと今は思う。声を上げる選択肢を、もっと早く自分に許してよかった。
陰口を撒いていた本人が犯人だったと判明した瞬間の、あの場の沈黙はしばらく忘れられない。誰も言葉を返さなかったあの数秒の長さが、今でも耳に残っている。
同じ料金箱の前で、私と同じように疑われていた仲間の顔を思い出すたび、もっと早く話し合えばよかったとも思う。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、40代・女性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














