祖父母の相続の場で「貯金なんて残ってない」と言う伯父→妻「では8年分の通帳を見せて」と詰め寄った結果
残らなかったはずの財産
妻の祖父母は、裕福な人たちだった。
広い一軒家に住み、孫にも惜しみなく物を買い与える、そういう家だった。
二人が相次いで亡くなり、相続の話し合いが始まった。財産を管理していたのは、長男である妻の伯父だ。
「貯金なんて残ってない」
伯父はそう切り出した。葬式代で全部使った、だから分けるものは何もないと。立派な葬儀だったのは確かだが、それでも引っかかる金額だった。
親族はみな、年長の伯父に遠慮して黙り込んだ。私の妻だけが、納得のいかない顔をしていた。
通帳を見せて
祖父母は長く施設で暮らしていた。
妻が言うには、施設費は年金でほぼ賄えていて、貯金は減るどころか増えていたはずだという。孫にあれだけ気前よくしてくれた人が、何も残していないはずがなかった。
妻は専門家に相談し、相続人の権利として口座の取引履歴を取り寄せた。
「身内を疑うようで気が引ける」と何度も迷っていたが、祖父母が遺してくれた思いを無駄にしたくない、と腹を決めた。
手元に届いた記録には、施設費とは別に、毎月のように引き出された大きな金額が並んでいた。
妻は一行ずつ印をつけ、その額を電卓で合計していった。
次の集まりで、妻はその束をそっとテーブルに置いた。
「では8年分の通帳を見せてください」
伯父の顔が、見る間に強張った。
「立て替えがあって」と言いかけ、続きを飲み込む。
妻が一つひとつ使い道を尋ねると、伯父は何も答えられず、額に汗をにじませた。
「領収書は、残ってますよね」
妻が静かに重ねると、伯父はとうとう一枚も出せなかった。
施設費は年金で足りていた。残るはずの貯金が、なぜか毎月消えていた。その意味は、もうその場の全員に伝わっていた。
逆転した立場
場の空気が変わった。これまで伯父に従っていた親族たちが、次々と妻に同調しはじめた。
「兄さん、これはちゃんとしないと」
妻の母までそう言った。これまで「兄さんに任せていたんだから」と繰り返していた人だ。その母が顔を上げたことで、流れは決まった。
逃げ場をなくした伯父は、目を泳がせたまま、とうとう正規の分割に応じると小声で認めた。
後日、妻の家には本来受け取るべき額が振り込まれた。
あれほど大きな顔をしていた伯父は、それ以来すっかり大人しくなった。
法事で顔を合わせても、妻を避けるように先に目を伏せる。隅の席で小さくお茶をすするだけになった。
「記録は、嘘をつかないから」
妻のその一言が、今も忘れられない。
※tendが独自に実施したアンケートで集めた、30代・男性読者様の体験談をもとに記事化しています
※本コンテンツ内の画像は、生成AIを利用して作成しています。














